「わかる共形変換」続編シリーズ

わかる c·t=一定 \(c\cdot t=\text{一定}\) は、それ自体では何も言いません。どんな宇宙でも実現できてしまう。
だからこそ、あらゆる式に代入できます ── 宇宙論を、いちばん短く書くための記法
その「短さ」を、情報理論の言葉で最後まで測るシリーズです。

全 50 話・完結 + 番外編 5 話/ 6 部構成各話:数える → 割り算する → 動く図 → 種明かし → 練習問題本編完結+番外編 5 話印刷・PDF化対応

前シリーズの背骨は「次元付きは帳簿、無次元だけが物理」でした。ところが情報理論の量 ── ビット、演算回数、パラメータの個数、エントロピー ── は、最初から全部無次元です。単位を持たない。だからこの言葉で書かれた宇宙論は、はじめから「物理」の列にしかいられません。前シリーズ番外編②が「宇宙は有限リソースの計算機か」と問い、「動機は的確、実装は的外れ」と答えて終わったところから、もう一度始めます。今度は判定ではなく 圧縮 の話として。

このシリーズの作法

数える → 割る。メモリ \(N=\dfrac{\pi}{\ln2}\left(\dfrac{R_H}{\ell_P}\right)^2\)、クロック \(\ln\dfrac{t_0}{t_P}=140\)、演算 \(\Omega=\displaystyle\int\frac{2E}{\pi\hbar}dt\)、パラメータの個数 ── どれも無次元。割ると、毎回膨張則そのものが出てきます。

第 I 部
記法をつくる
数えて、割る。それだけで膨張則が出てくることを繰り返し確かめ、\(c\cdot t= ext{一定}\) が「モデル」ではなく記法だと確定させるまで。
第 1 回 公開 動く図つき

宇宙は、1ビットに0.035回しか計算していない

メモリと演算をそれぞれ数えて、割り算する。すると時間がきれいに消えて、状態方程式だけが残る ── 1ビットあたりの演算回数は、宇宙の年齢にも大きさにも依らない純粋な数だった。放射で1/57、物質で1/42.7、\(c\cdot t=\text{一定}\) で 1/28.5。「1」に届くには \(w=-0.977\) が必要で、観測されている暗黒エネルギーはその向こう側にいる。

\(\Omega/N=\dfrac{\ln 2}{3\pi^{2}(1+w)}\) ── \(a\propto t\) の 8つ目の特徴づけ
第 2 回 公開 動く図つき

二つのクロックが、噛み合っていない

宇宙には対数の目盛りが二本あります ── 時間の \(\ln(t_0/t_P)=140.24\) ステップと、繰り込み群の \(\ln(T_P/T_0)=73.03\) ステップ。割ると膨張則が出ます(\(\bar p=0.513\)、放射のすぐ上)。\(c\cdot t=\text{一定}\) は \(140.24=73.03\) を要求する ── 動力学を一行も使わず、今日の温度と年齢だけで。中性子が凍る 0.8 MeV に達するのが 4.05 年後、中性子の寿命は 880 秒。

\(d\ln T/d\ln t=-p\) ── 9つ目の特徴づけ(二つの時計が 1:1)
第 3 回 公開 動く図つき 読者の質問から

「c·t=一定」は、どんな宇宙でも実現できる

「書き換えなら無次元量を動かさない。なぜ失格になるのか」── この反論を最後まで押します。押しきると、放射優勢でも物質優勢でも \(c\cdot t\) は厳密に一定にできてしまう(時間座標を \(T=e^{\eta/\eta_0}\) に取ればいい。数値で 1.000000 まで確認)。差が出るのは \(T\) の中身だけ ── 放射なら \(T\propto e^{\sqrt t}\)、誰の時計でもない。残る主張はちょうど一つ、「その時計が宇宙の年齢である」

\(T=e^{\eta/\eta_0}\) ── 10つ目の特徴づけ(三つの時計が一致)
第 4 回 公開 動く図つき シリーズの折り返し

全部が、質量ひとつになる

何も言わない書き換えを、なぜ使うのか ── 式が短くなるから。共形変換で消せるものを全部消すと、空間の膨張も、曲率も、温度も、光も順に消えて、時間変化するものが一つしか残りません。宇宙の歴史は「育っていく質量が、固定された \(k_BT_0\) を追い越していく」話に潰れます(再結合 \(1+z=1100.9\)、中性子凍結 0.800 MeV ── 標準と厳密に一致)。そして距離も年齢も、積分なしの閉じた式になります。

\(H_0d_L/c=(1+z)\ln(1+z)\) ── 無次元パラメータ 0 個の予言
第 5 回 公開 動く図つき

短さは、いくらで買えるのか

記述長ゼロ(第4回)と、\(z\simeq1.1\) での 0.21 等のずれ。この二つをビットという一つの通貨に両替します。パラメータ1個の値段は AIC で 1.443 ビット(データ数に依らない)、BIC で \( frac12\log_2N\)=1701本なら 5.37 ビット。当てはまりの損は \(\Delta\chi^2/(2\ln2)\)=154 ビット。差引 149 ビットの負けです。ただし26 本より少なければ \(c\cdot t= ext{一定}\) のほうが良いモデル ── 短さの利益は \(\log N\)、当てはまりの損は \(N\)。オッカムの剃刀には有効期限がありました。

パラメータ1個 = \( frac12\log_2 N\) ビット
第 6 回 公開 動く図つき

メモリの \(10^{-18}\) しか使っていない

使用率はじつは面積比そのものでした ── 宇宙の全ブラックホールの地平面を一枚に貼ると半径 17 光年の球。そして今日のエントロピーの 99.999999999999986% が重力側(ワイル側)にあります。履歴は三段:プランク期は使用率 ≈ 1(満杯)、今日の熱側だけなら \(7 imes10^{-34}\)(空になった)、ブラックホール込みで \(1.5 imes10^{-18}\)(重力が 15.4 桁埋め戻した)。共形変換が動かせるのは、使われていない側だけ ── 道具の壊れ具合が、時間の矢でした。

使用率 \(=\sum A_{ m BH}/A_H\)
第 II 部 ── 次はここ
方程式に、片っ端から入れる
記法ができたので、宇宙論の外へ持ち出します。量子力学・重力・熱・光・流体・臨界現象・生物 ── 入れて何が起きるかを一本ずつ。結論を先に言うと、動くのはいつも一つだけです。
第 7 回 公開 動く図つき

重力に、入れてみる

この絵では \( ilde G=G/a^2\) が強制され、\(\dot G/G=-2H_0=-1.45 imes10^{-10}\)/年 ── 月レーザー測距の上限の 1450 倍。それでも誰も気づけません(\(lpha_G\) が動かないから)。そして核心:ディラックが1937年に \(G\propto1/t\) を予言した根拠の二つの大数 \(N_1=2.27 imes10^{39}\)、\(N_2=4.63 imes10^{40}\) は、本当に \(G\) を変えてみると両方とも不変でした ── \(G\) だけを動かすことはできないので、ディラックの処方は空回りします。

BH エントロピーと重力波の \(h\) だけが不変 ── 第6回の「使われているメモリ」に、道具は届かない
第 8 回 公開 動く図つき

量子力学に、入れてみる

シュレディンガー方程式は両辺ともウェイト \(-5/2\) で一文字も変わりません ── 変わるのは \(m(t)=m_0t/t_0\) だけ。すると自由粒子の速度が \(1/t\) で落ち、波束は \(\Delta x\propto\ln t\) でしか広がらない。積分すると質量を持つものの共動到達距離は \(v_1t_1\) で頭打ち(再結合期の水素原子なら 1.9 パーセク)。光だけが \(c\,t_1\ln(t/t_1)\) で無限に伸びる。トンネル透過率は無次元なので完全に不変 ── 太陽が燃える速さも変わりません。

物質は歩けなくなり、光は歩き続ける
第 9 回 公開 動く図つき

原子に、入れてみる

この絵では原子が \(1/t\) で縮みます ── 1918年にアインシュタインがまさにこの論法でワイルの統一理論を殺した。同じ刃が届かない理由は二つ:①\(\Omega\) が一価関数なので経路依存性が最初から無い、②断熱パラメータ \(\hbar H/\Delta E=1.1 imes10^{-34}\)。いちばんゆるい21cm線でも断熱が破れるのは \(10^{-10}\) 秒より前で、原子が存在する全時代にわたって完全に断熱。線のぼけは自然幅の \(9 imes10^{-20}\) 倍(19桁下)。

ボーア半径は \(7.2 imes10^{-11}\)/年 で縮むのに、比べる相手が全部ウェイト \(+1\)
第 10 回 公開 動く図つき

熱と情報に、入れてみる

この絵では温度が動かない(\( ilde T=aT=\)一定)ので、1ビットの消去コストが宇宙の全歴史を通じて一定になります(\(1.63 imes10^{-4}\) eV)。ただしエネルギーは次元付き ── 比較相手とどの熱浴に捨てるかを言うまで、値段は決まりません。宇宙の全エネルギーで何ビット消せるかを温度ごとに数えると 60 桁動き、CMB 温度なら書ける量の \(10^{-30}\) しか消せない。そして「ランダウアー限界ぴったり」は \(E=T_HS\) という恒等式を読んだだけでした。

書ける \(10^{122}\)、消せる \(10^{92}\) ── 宇宙はほぼ書き込み専用
第 11 回 公開 動く図つき

光に、入れてみる

数密度も、エネルギー密度も、温度も、光子1個のエネルギーも、波長も ── 全部が一定。標準の絵での \(a\) の指数と、その量のウェイトが、ぴったり同じ数だからです。この絵の光子ガスは完全に静止している。それでも観測は動きません ── CMB を決める無次元数は \(s/n=3.60\,k_B\) と \(\eta=6.1 imes10^{-10}\) の二つだけで、どちらも不変だから。だから赤方偏移は「光が伸びた」ではなく「受け取る側が育った」に、まるごと裏返ります。

\(\Omega^{D-4}\) ── 私たちが4次元にいることが、この絵が成立する理由
第 12 回 公開 動く図つき

真空に、入れてみる

エネルギー密度はウェイト \(-4\) なので \( ilde ho=a^4 ho\)。三成分に当てると順位が完全に逆転します ── 放射が一定、物質が \(\propto t\)、そして宇宙定数が \(\propto t^4\) でいちばん速く育つ。「宇宙定数」という名前そのものが、絵の取り方に依存していました。 それでも \( ho_\Lambda/M_{ m Pl}^4=1.13 imes10^{-123}\) も \( ho_\Lambda/ ho_m\propto a^3\) も不変 ── 宇宙定数問題も「なぜ今」問題も、絵を変えても一ミリも動きません。

良い謎は、無次元で書かれている
第 13 回 公開 動く図つき

流体と乱流に、入れてみる

レイノルズ数・マッハ数・プラントル数・フルード数・ウェーバー数・ストローハル数 ── 一つ残らずウェイト 0。だから相似則も風洞実験もそのまま。面白いのは内訳で、\(\mathrm{Re}= ho vL/\eta\) の四つの部品は \(a^4,a^0,a^{-1},a^3\) とバラバラに動くのに、指数の和が \(4-1-3=0\) でぴったり戻ります。コルモゴロフの \(-5/3\) も臨界指数もフラクタル次元も不変 ── 共形変換は「大きさ」にしか触れず、「かたち」には手が届かない。道具の限界を正確に測る回です。

ナビエ=ストークス方程式は、この絵でも完全にそのまま
第 14 回 公開 動く図つき

相転移に、入れてみる

このシリーズが13回使ってきたウェイト表は古典近似でした ── 場の理論では \(\Delta=\Delta_{古典}+\gamma\)。3次元イジングのスピン演算子は自由場の \(0.5\) に対して 0.5181489(10)、ずれ \(\gamma_\sigma=0.0181489\)(3.6%)。2次元では 12.5%、そして4次元でぴたりとゼロ(上部臨界次元)。\(\eta=2\gamma_\sigma\) を通じてこの誤差は水や磁石で実際に測れます。崩れたのは「無次元は不変」ではなく、「ウェイトは次元解析で決まる」という前提のほうでした。

帳簿の数字に、誤差棒が付く ── ウェイトは測定の対象だった
第 15 回 公開 動く図つき

化学と生物に、入れてみる

アレニウス因子も平衡定数も pH も、指数の中身が無次元なのでまるごと無傷。クライバー則を分解すると、指数 3/4 は不変で係数だけが \( imes a^{5/4}\) で動く(次元付きだから帳簿)。そして一生の心拍数は心拍数 \(\propto M^{-1/4}\)×寿命 \(\propto M^{1/4}\) で体重に依らず 15 億回 ── 無次元なので不変。生命が測れるものを全部並べるとひとつ残らず無次元で、だから生命は自分がどちらの絵にいるか知りようがありません

第9回「原子は比較相手を持たない」を、生物のスケールまで押し上げる
第 50 回 公開 動く図つき

最終回:動くのは、一つだけだった

六つの部、九つの理論、八つの壊れる場所、16 の開いた扉、四度の圧縮。最後にその圧縮をシリーズ自身に当てると、6 個あった道具は 2 個になった ── (i) 次元付きと無次元を分けること、(ii) 全部をビットで測ること。そしてもう一段、(ii) は (i) を検査するための道具だった。50 回でやったのは、一つの考えと、その検査の仕方。判定は一度も動かず、動いたのは「なぜそう判定できるのかの理解」だけだった。持ち帰れるのは三行です。

動くものと動かないものを分けること
番外編 ── 完結後の深掘り
掘り残したところへ、もう一度
全50話を書き終えたあとで、質量の変化という掘り残しに戻りました。50 回のあいだ「膨張か収縮かは区別できない」と書き続けましたが、では何なら区別できるのか。掘ったら縮退が出て、指数写像の話につながり、最後は「無次元量とは何か、定数はあるのか」まで行きました。
番外編 ① 公開 動く図つき

質量が変わるとは、どういうことか

μ = m_p/m_e はウェイト 0 なので共形変換では動かない ── だから「膨張か収縮か」の区別がつかない。ところが m_e は 100% ヒッグス起源、m_p は 87〜93% が Λ_QCD = トレースアノマリーの産物で、μ は二つの起源をまたぐ唯一の比だった。掘って分かったのは縮退:定数の変化は (α, X_e, X_q) の 3 次元の問題で、フィッシャー行列の最悪方向は 99.6% がクォーク質量、条件数 1196 倍(10.2 ビット)。しかもその見えない方向が、いちばん物理に効く方向だった。

「区別できない」を「何なら区別できるか」に変える
番外編 ② 公開 動く図つき

階層は、自分の対数まで縮む

次元転移 Λ = M exp(−2π/b₀α) を微分すると d lnΛ/d lnα = H ── 利得はちょうど階層の大きさ。だから B ビットの階層は、記述長 log₂B ビットまで縮む(厳密)。宇宙定数問題の 408 ビットも、指数写像があれば 8.7 ビット ── 圧縮率 47 倍。ここから微調整の第二の判定基準(指数写像が使えるか)が出て、実際に物理学者が問題視している分布を再現する。そして第32回のコスモンは、その下限からわずか 2 ビットだった。

408 ビットの問題が、8.7 ビットになる
番外編 ③ 公開 動く図つき

無次元量とは何か、そして定数はあるのか

無次元量とは「電波で送れる量」── 物を運ばずに伝えられるもの。ところが 0 の列は一様ではなく、比/角度/個数/指数の四型があって群が違う。対数は発見ではなく、乗法群から加法群への同型だった。するとコンパクトなら Haar 測度が正規化でき事前分布が一意に決まる ── 第48回の基準は定理になる。争いのない微調整問題が θ_QCD ただ一つなのも、それが唯一の角度だから。そして「定数」を分け直すと、約 24 は走る関数、6 個はこの宇宙の状態、本当に不変なものは定数ではなく定理。残る θ_QCD こそ、アクシオンが消そうとしている当のもの。

定数は、一つも無いのかもしれない
番外編 ④ 公開 動く図つき

定数のあいだに、隠れた関係はあるか

1/α = 137 ちょうどは 170 万σで排除されるのに、物理的な差は 0.026% しかない ── 世界の側で効くのは中性子寿命の 3σ だけ。気になる理由は整数だからで、その驚きは 3.8 ビット、偶然の帯の下端だった。「こっちを変えるのはあっちと同じ」は三種類あり、完全な縮退(θ とクォーク位相、CKM の 5 方向)は記法についての発見、観測上の縮退は道具についての発見、隠れた関係だけが物理の発見。そして関係を「探す」には値段がつく ── 4.1 ビットの予言が、15.7 ビットの発見に勝つ。

「理論が先」とは、測度を先に固定すること
番外編 ⑤ 公開 動く図つき

事前分布は、選ぶものではなかった

くりこみ群が測度を配る ── 1 次元の流れで不変な測度は ρ ∝ 1/β のただ一つで、それは RG 時間そのもの。判定がスケールで変われば規約に依存していることになるから(第3回)、事前分布は RG 不変でなければならず、そして一意に決まる。測度の形は β の形だけで決まり、乗法的なら安く加法的なら高い ── 't Hooft の基準そのもの。標準模型の全 20 パラメータを採点すると「高い」は 3 個だけで、それは階層性・強い CP・宇宙定数、偽陽性ゼロ・偽陰性ゼロ。そして番外編③と第48回の逃げ道を、二つとも塞ぐことになった。

β の形だけで、三大問題が当たる
第 III 部
情報として、測る
宇宙を有限リソースの計算機として、最後まで数え切る部。メモリ・通信・誤り訂正・消去のコスト。前シリーズ番外編②が「縛る相手を間違えていた」と結論して開いたまま閉じた扉に、ここで入ります。
第 16 回 公開 動く図つき

動くのは、いつも一つ(第 II 部・総括)

重力・量子力学・原子・熱と情報・光・真空・流体・相転移・化学生物 ── 9 分野に同じ記法を入れて何が動くかを数えました。結果はいつも同じ形で、動いたのは全部が次元付き、動かなかったのは全部が無次元。例外は一つもありません。ウェイトの地図も完成しました(\(+3\) から \(-4\) まで)。そして道具の適用範囲がはっきりします ── 大きさが主役の学問では強力、かたちが主役の学問では完全に無力。ただし第14回のとおり、ウェイト表そのものには誤差棒が付きます。

「無次元だから安全」ではなく、「観測量だから安全」
第 17 回 公開 動く図つき

一度も通信していない 9600 台が、17ビット合意している

地平線問題を分散システムの言葉に直します。\(\Delta T/T\sim10^{-5}\) は 16.6 ビットの一致、因果的に切れた領域は 9600 台、掛けて 約 20 キロバイト ── スマホなら一瞬で送れる量。問題は情報の量ではなく、送る手段が無かったこと(チャネルの不在)でした。\(a\propto t\) では粒子的地平線が発散するのでパッチは 1 個・合意ビットはゼロ ── ただし放射を入れると \(z>103\) で壊れ、\(1.2 imes10^4\) 台に戻ります。インフレーションは「合意」ではなく 複製で解いている。

偶然の確率 \(10^{-48000}\) ── 選択肢は完全に消える
第 18 回 公開 動く図つき

アドレス線が、足りない

空間セルは \(5.27 imes10^{182}\) 個、書けるビットは \(2.96 imes10^{122}\)。比は恒等式 \((\pi/\ln2)/(R_H/\ell_P)=5.6 imes10^{-61}\) で、宇宙が大きくなるほど番地不足は開きます(足りていたのはプランク長の4.5倍以下だったときだけ)。逆にすると 1ビットが担当する体積の一辺は 1.96 fm ── 陽子の大きさ。正体は \((R_H\ell_P^2)^{1/3}\)、恒等式でも物理でもない偶然の欄に置くしかない一致です。番地表自体がメモリの \(10^{63}\) 倍、全履歴なら \(10^{-122}\)。

ホログラフィーは圧縮ではない ── 体積セルには、はじめから番地が振られていない
第 19 回 公開 動く図つき

恒等式は、本当に物理ではないのか

このシリーズが繰り返してきた「恒等式か、偶然か、物理か」を手続きにします ── 情報理論のサプライザル \(-\log_2( ext{幅}/ ext{範囲})\) で驚きをビットに直すと、層がはっきり分かれました。恒等式は 0 ビット、偶然は数ビット、本物の問題は \(10^5\) ビット。\( ho_\Lambda^{1/4}\) と \(m_ u\) の 22 倍一致はコイン5回ぶん(4.7 bit)にすぎず、唯一 15.7 bit あるのが小出の関係式でした。そして「恒等式は物理ではない」は「無意味」ではない ── 予言ではなく検算です。

良い関係式とは、データの記述長を減らすもの(第5回の天秤を「一致」に当てる)
第 20 回 公開 動く図つき

光シートを、本当に縛ってみる

前シリーズが「縛るべきは光シート上の情報量」と結論して開いたまま閉じた扉に入ります。ブソー境界の使用率 \(f\) を追うと、プランク期にちょうど飽和し、そこから 33 桁の余裕が開きます。その飽和は第19回の道具で測ると恒等式(驚き 0 ビット)でした。そして核心 ── 制約としては弱すぎて、予言が出ません。排除されるのは「プランク期より前で破る膨張則」だけ。「宇宙は有限リソースの計算機だ」が意味を持つのは、量子重力の領域だけだという、適用範囲の確定です。

ビット数を固定→ド・ジッター/アドレス空間→\(a\propto t\)/使用率→\(a\propto t^{1/3}\)
第 21 回 公開 動く図つき

時間の矢の目盛りは、四本ある

総エントロピー(\(+104\) 桁)、メモリ使用率(\(-18\))、ホログラフィック余裕(\(+33\))、自由度 \(a\)(\(-1.2\))── 二本は増え、二本は減ります。まず四本とも無次元=共形不変、つまり時間の矢はまるごと「物理」の列にある。向きが逆に見えたのは比の混在で、同じ単位に揃えると分母 0.872 桁/ステップ、分子 0.745 桁/ステップ、差はわずか 0.127。それが 140 ステップ積もって 17.8 桁 = 使用率 \(1.5 imes10^{-18}\) にぴたり一致します。

矢は分子にあり、分母は舞台 ── 第6回の言い方を精密化
第 22 回 公開 動く図つき

宇宙という計算機の、命令セット

第1回で空欄だった「演算の中身」を埋めます。ML 限界のレートは \(2E/\pi\hbar\) でエネルギーに比例するので、演算の配分はそのままエネルギー収支表 ── 暗黒エネルギー68.5%、暗黒物質26.5%、バリオン4.9%。ここで一言が効きます:真空は基底状態なので遷移先がない。これで68.5%が消え、残る31.5%の84%は暗黒物質(重力以外に相互作用しない)。宇宙は演算資源の 95.0% を「何も起きない」成分に割り当てている。星として輝いたエネルギーは全体の \(1.3 imes10^{-6}\)。

第1回の「1ビットあたり0.035回」は、実質 580ビットに1回に下がる
第 23 回 公開 動く図つき

誤り訂正としての、地平面

地平面を符号として読み直します。物理ビット \(2.96 imes10^{122}\)、論理ビット \(4.47 imes10^{104}\) ── 符号化率 \(1.5 imes10^{-18}\)、つまり冗長度 \(6.6 imes10^{17}\)。第6回の「使用率」と同じ数の裏表で、量子誤り訂正の表面符号より 14 桁冗長です。核心は読み方 ── 同じ数を「空き」とも「冗長」とも読める。比較相手を言うまで区別できない。第3回の手術が、シリーズ自身の数字に当たりました。最後は自制も:論理1ビットの大きさ \(2.2 imes10^{-26}\) m は何とも一致しないので、語ることがない

原理上は、地平面の半分が壊れても復元できる(上限としては)
第 24 回 公開 動く図つき

地平面を、毎秒何ビットが渡れるか

ベケンシュタイン境界を横断時間で割ると通信路容量 C=2πE/(ħln2)=6.79×10¹⁰⁴ bit/s。第1回の dN/dt とちょうど 2 倍だったのは恒等式で、C·t=N ── 宇宙は 1 ハッブル時間で自分のメモリをちょうど 1 回だけ動かせる。第17回の 20 KB は 10⁻⁹⁶ 秒で送れた。

C·t = N / 帯域はボトルネックではない
第 25 回 公開 動く図つき

物理法則は圧縮アルゴリズムか

a∝t は 66 ビット、アインシュタイン方程式は 512 ビット。では短いほど良い理論か ── MDL でまじめに総合すると、法則の長さの数え方ひとつで結論が 214 bit 負け ⇄ 200 bit 勝ちにひっくり返る。信用できるのはパラメータ数と残差だけ。圧縮率は良さではなく掛け金だった。

MDL / 圧縮率 = 反証可能性
第 IV 部
同じ手術を、ほかの理論にもかける
第3回でやった手術 ── 名前の中に隠れた比較相手を名指しする ── を、他のモデルに当てます。どれも「等価な書き換え」と「観測にかかる主張」が同じ名前で呼ばれています。
第 26 回 公開 動く図つき

同じ数を、八つの言語で(第 III 部・完)

1.5×10⁻¹⁸ が三度、140 が四度。追いかけると全部同じ数だった ── 使用率=占有率はホログラフィーから一行の恒等式。見出し数字 24 個は独立な入力 12 個に帰着し、驚きの合計は 8.4 ビット、うち 7.4 は第18回で偶然と判定済みの 1.96 fm。第 III 部は発見ではなく、構造の地図だった。

24 個 → 入力 12 個 / 恒等式 5 本
第 27 回 公開 動く図つき

インフレーションを、同じ手術にかける

「地平線問題を解く」を二つに切る ── (A) 因果的に繋げること、(B) ゆらぎのスペクトル。(A) は a∝t なら e-folds 0・パラメータ 0 で済む(粒子的地平線が対数発散する)。残るのは (B) で、地平線が要求する N=62.1 と n_s が示す N=57.0±6.8 が 0.75σ で一致する。

(A) は安い / N=62.1 vs 57.0±6.8
第 28 回 公開 動く図つき

VSL ── どこで手術に失敗したのか

「光速」と呼ばれる c は四か所に別々の役割で出てくる(Ellis & Uzan)。VSL は e と ħ を固定するので、観測にかかる中身はまるごと「α が変わる」── そして α は実験室で 32.5 ビット、オクロで 26.4 ビット押さえられている。地平線問題を解くには α(z)/α₀ ≥ 1+z が要り、元素合成で 10 桁の超過。相転移型なら逃れられるが、逃れた瞬間に予言も消える。

手術の失敗は「c を動かしたこと」ではなく「c と呼び続けたこと」
第 29 回 公開 動く図つき

MOND ── 加速度に隠れた比較相手

a₀ は次元付き(ウェイト −1)なので「小さい」は比較相手を言うまで文にならない。探すとすぐ隣に cH₀ がいて a₀/cH₀=0.18 ── しかも比はウェイト 0 で、絵を取り替えても動かない。驚きは 5.9 ビット(ρ_Λ と m_ν の 4.7 と同じ層)。記述長で測ると銀河の回転曲線では MOND が 1971 ビット勝ち、銀河団と CMB では ΛCDM。

「暗黒物質か MOND か」は一つの問いではなかった
第 30 回 公開 動く図つき

変わる定数を、実際に測る

原子時計・オクロ天然原子炉・クエーサー吸収線。三つの物理は違うのに骨格は同じ一行 ──(観測量の変化)= K ×(Δα/α)。オクロの測定精度は 2% と粗いのに原子時計と同じ上限が出るのは、増幅率が 10⁷ あるから。対数ステップに置き直すと、データがあるのは全歴史の 29%、26 ビットの精度は 0.1% だけ。

精度より、増幅する場所を見つけるほうが効く
第 31 回 公開 動く図つき

ペンローズの共形サイクリック宇宙論

CCC の中心の一手は第11回の結果そのもの ── 質量が無ければ物差しが無く、物差しが無ければ共形因子に意味が無い。貼り合わせに要る三条件をこのシリーズの量で測ると、消すべき静止質量 31.4%、貼り合わせは対数ステップ 348(今日は 40% の位置)、使用率は 1.5e-18 から 3.2e-22 へ。そして第16回+第6回から、CCC が情報消失に賭けざるを得ない理由が出る。

第 IV 部でいちばん手術に耐えている理論
第 32 回 公開 動く図つき

ヴェッテリヒのコスモン

第4回の絵は a(t) を手で置いた記法、コスモンは場の方程式が χ(t) を決める理論。払うのはポテンシャル 2 個=10.7 ビット、買い戻せるのは ρ_Λ/M_Pl⁴ の微調整 408 ビット。そして VSL のように死なないのは、すべての質量を同じ χ が決めるので質量比が固定されるから ── α の 26 ビットに一切ひっかからない。判定は w = −1.03±0.03 の土俵へ。

記法は L(法則) を短くし、理論は L(残差) を減らしにいく
第 33 回 公開 動く図つき

ミルン宇宙と R_h=ct

どちらも a ∝ t。ところが a=t の FLRW では R = 6(1+k)/t² なので、k=−1 でちょうどゼロ ── ミルンは座標を取り替えたミンコフスキー時空そのもの。ここから三段の判定手続きが作れて、すべての FLRW は「共形変換が要る」段に入る。そして z=1 では、中身が空っぽのミルンのほうが ΛCDM に近い。

見分け方は k を見ること / ハッブル図に合うのは弱い検定
第 34 回 公開 動く図つき

共形重力(マンハイム)

作用を Weyl² にすると S → Ω^(D−4)S で、D=4 でだけ共形不変 ── 第11回のマクスウェル作用と同じ構造。すると重力の結合 α_g が無次元になり、宇宙定数項は対称性が禁じ(408 ビットがただで消える)、真空解の線形項 γr の交差半径が 44 kpc に来る。代償はゴースト ── 共形因子のゴーストを消して、質量を持つスピン2のゴーストと取り替えた。

第 IV 部でただ一つ、手術台に載らなかった理論
第 35 回 公開 動く図つき

漸近安全性と、走る G

G を k と組んで無次元化した g = Gk² を走らせると、傾きはちょうど 2 ── 古典次元そのもので、プランク以下ではウェイト表がぴったり正しい。ところが紫外の固定点では g が定数になり、異常次元 η_N = −2 が古典次元 +2 を丸ごと打ち消す。第14回で 3 次元イジングの誤差を 3.6% と測ったが、重力では 100%。ヒッグス質量の予言(126 GeV 対 実測 125.25)は驚き 4〜6 ビット。

第34回と同じ入口 ── 物理は無次元の結合にある
第 V 部
壊れる場所を、探しにいく
記法が効かなくなる場所を、正面から探す部。量子アノマリー、ゴースト、回転する時空、そして重力エントロピー ── どれも「共形変換で消せないもの」です。
第 36 回 公開 動く図つき

手術台の上に並べる(第 IV 部・総括)

九つの理論に同じ手術を当てて一枚の表にすると、(A) 記法と (B) 観測にかかる主張を区別できていなかったのは VSL ただ一つ。分かれ目は「名前が (A) を指しているか」ではなく「理論の側が区別できているか」だった。予言の置き場所は例外なく無次元量。そして並べてはじめて見えたもの ── 驚きの 4〜7.5 ビットの帯に 6 件が集まる。正体はたぶん選択効果で、そこは「論文にはなるが、合意にはならない」場所。

良い理論は、第3回の手術を最初から済ませてある
第 37 回 公開 動く図つき

量子アノマリー ── 0 の列に、量子が数字を書き込む

第11回の「光には何も起きていない」は古典の話だった。量子は D=4 に留まれず(次元正則化なら D=4−ε、切断なら μ)、第34回で数えた Ω^(D−4) がそのまま破れになる。α が無次元なのは D=4 でだけ。走りは 7.1 パーセント、実験室の精度を雑音の床に取れば雑音の上 28.7 ビット ── 偶然の帯のはるか上。第30回の「α は 26 ビットで一定」と矛盾しないのは、別の問いだから。そして破れの大きさは、場の個数を数えているだけだった。

破れたのは場ではなく、結合定数だった
第 38 回 公開 動く図つき

共形因子問題 ── 符号が逆の運動項

g = Ω²ĝ と書いてアインシュタイン作用を書き直すと、共形因子の運動項の係数は (D−1)(D−2)、符号は普通のスカラー場と逆。ゼロにできるのは D=1 と D=2 だけで、D=4 では 6。皺を細かくするだけでユークリッド作用は n² で下に落ち続け、経路積分の重みは n=50 で 8498 ビット ── 底が無い。直し方は積分路を回すことだが第一原理からの導出は無い。そして分かったのは、ゴーストは消えず、共形因子とスピン 2 のあいだで置き場所が移るだけだということ。

道具が壊れる場所は、消えずに移動する
第 39 回 公開 動く図つき

回転する時空 ── 触れられない列に置かれた上限

カー解のラベルは M と χ の二つで、ウェイト表に置くと M は −1、χ は 0 ── 片方だけが帳簿、片方は物理。第 II 部の「共形変換が触れるのは大きさだけ」のいちばん綺麗な例。χ≤1 も、取り出せる質量の上限 0.29289 も、χ=1 でエントロピーがちょうど半分になることも、すべて無次元の列にあって共形変換では動かない。実測スピンは上限のすぐ下に並び、驚きは 4.3 ビット ── 偶然の帯に戻ってくるが説明がある。そしてカーは第33回の三段判定で第 3 段、この道具が正面から届かない最初の相手。

ワイル ≠ 0 ── 共形変換が届かない時空
第 40 回 公開 動く図つき

重力エントロピー ── 行程の半分も進んでいない

ハッブル球はちょうど自分のシュヴァルツシルト半径にいる(r_s/R_H = 1.000000、臨界密度なら恒等式)。そのおかげで三つの 10¹²² が同じ数になる ── ホログラフィック限界、全質量を 1 個の BH にしたときのエントロピー、第24回の N = C·t。5 パーセントのずれは宇宙年齢とハッブル時間の比そのもの。実際のエントロピー 3.1e104 の 99.999% は超巨大ブラックホールで、上限まで 59.3 倍化ぶんの余白がある。余白が残るのは重力が引力しかないから ── 一様な重力場は最小エントロピー。

三つの見出しの数字は、一つだった
第 41 回 公開 動く図つき

ワイル曲率仮説 ── 時間の矢は、届く場所から届かない場所へ

ペンローズは初期特異点でワイル = 0 を要請した ── 4 次元のリーマン曲率 20 成分のうち、ちょうど半分を落とす条件。有名な 10^(10^123) をビットで測ると 3.27e122 ビットで、第24回の N = C·t、第40回のホログラフィック限界とまったく同じ数だった(四度目の圧縮)。そして第33回の三段判定で初期と終期を並べると、初期はワイル = 0 で第 2 段(道具が届く)、終期のブラックホールは第 3 段(届かない)── 時間の矢は、共形変換が届く場所から届かない場所へ向かっている。

四つの見出しの数字は、一つだった
第 42 回 公開 動く図つき

ブラックホールの内部 ── 地平面は、共形変換では消せない

共形変換は光円錐を動かさず、事象の地平面は因果構造だけで決まる ── だからウェイト 0 で、作れも消せもしない。ところが見かけの地平面(θ=0)は動く。動かない方は未来を全部知らないと測れず、測れる方は動く。ペンローズ図は共形変換そのもので、第1回の「記法であってモデルではない」の双子 ── 記法は無価値ではなく、ただ主張ではないだけ。中に入っても、最も甘い見積もりで太陽質量 93.9 ビット、M87* 126.5 ビット足りない ── 情報が失われる以前に、取り出す時間が無い。

記法は無価値ではない。ただ、主張ではないだけ
第 43 回 公開 動く図つき

プランクスケール ── 帳簿の列にいた最小長

ℓ_P = √(ħG/c³) は G のウェイト +2 から +1 ── ただの長さで、帳簿の列にいる。だから「最小の長さは ℓ_P」はそのままでは文になっておらず、文にするなら L/ℓ_P ≥ 1。そしてここで道具が本当に壊れる ── 共形不変性はスケールが無いことを要求し、最小長はスケールそのものだから、両立しない。ただしプランクスケールは「コンプトン波長とシュヴァルツシルト半径の比が 1 になる場所」として生き残る。LHC からそこまでは 50 倍化ぶん。

仮定からして排除されている ── 道具の端
第 44 回 公開 動く図つき

離散化 ── スケールは、無関係になればよい

格子は最小長そのものなのに、共形場理論は格子の上で計算されている。矛盾しない理由は、共形不変性が格子の性質ではなく、格子の理論が流れ着く固定点の性質だから ── 物理量が依存できるのは ξ/a だけで、臨界点ではそれが発散して a が答えから落ちる。3 次元イジングは連続と格子が ν で 4 桁一致し、普遍性は微視的な中身を消し去る。ただし格子の痕跡は (a/ξ)^0.83 でしか消えず、ヘリウムの λ 転移では 6σ の未解決の食い違いもある。

要求は「無いこと」ではなく「残らないこと」
第 VI 部 ── 最終部(完結)
記法とは何だったのか
50 回ぶんの帳簿と物理を、一枚に畳んで終わります。
第 45 回 公開 動く図つき

道具が触れるのは、ちょうど半分(第 V 部・総括)

第 V 部の八回を並べると、「壊れた」は二種類しかなかった ── A:スケールが持ち込まれた(道具は正しく報告している)、B:共形類に入らない構造(道具に言うことが無い)。どちらも故障ではない。そして 4 次元のリーマン曲率 20 成分は、リッチ 10(変わる)とワイル 10(共形不変)でちょうど半分ずつ ── カーに届かないのは道具が弱いからではなく、ワイル曲率とは共形変換が保つ部分そのものだから。だから時間の矢は、道具が触れない半分だけで書かれている。

道具は一度も故障していなかった
第 46 回 公開 動く図つき

a ∝ t の特徴づけ、全部

a ∝ t の言い方を全部集めると 12 個あり、うち 9 個は互いに恒等式(微分と積分の書き換え)。独立な入力は 3 個 ── 膨張則、アインシュタイン方程式、空間曲率。四度目の圧縮を、今度はシリーズ自身の主題に当てた。観測で試すと q=0 は 13σ・130 ビット、w=−1/3 は 23σ・395 ビットで桁で外れるのに、H₀t₀=1 だけはずれ 4.9 パーセントで、ハッブル定数の食い違いがちょうど 1 をまたぐ。違いは積分か瞬間か ── だから c·t=一定 は、もっともらしく見えた。

もっともらしさの出所が分かった
第 47 回 公開 動く図つき

無次元量の地図 ── 何が物理で、何が帳簿か

2019 年、SI は七つの定数を厳密に固定して単位を定義し直した ── キログラム原器は廃止され、質量は h から作られる。これは「次元付きは帳簿」の国際的な公式宣言で、第3回でこのシリーズが引いた線と同じ場所だった。ところが α は固定できない ── 無次元だから、単位の定義では決まらない。無次元量の地図は 3.1e122 から 1.13e-123 まで 815 ビットの幅があり、パラメータは 32 個、うち次元を持つのは μ² ただ一つ。そして 171.7 ビットが説明されていない。

c は決められて、α は決められない
第 48 回 公開 動く図つき

短さ・当てはまり・美しさ ── 三つの通貨

「美しさ」を六つの部品に分けると、対称性・統一・剛性は短さに、深さは当てはまりに還元できる(CKM 行列なら 9 → 4 で 26.8 ビットの節約)。残った「自然さ」は第三の通貨ではなく、事前分布の選択だった ── ρ_Λ/ρ_Planck は線形な事前なら 408.4 ビット、対数一様なら 8.2 ビット。ただし強い CP 問題の θ は角度なので線形な事前に理由があり、35.9 ビットは本物の微調整。そして感覚的な快だけは、この道具では測れなかった。

「不自然だ」は、事前分布の宣言だった
第 49 回 公開 動く図つき

開いたままの扉 ── 48 回で閉じなかった問い、全部

48 回で開けて閉じなかった問いを並べると 16 個あり、四種類に分かれた ── 観測で閉じる 6 個、計算で閉じる 4 個、定義で決まる 4 個、偶然/測れない 2 個。観測で閉じるものはほとんどが 2020〜2030 年代に決着する見込みで、読者は生きているうちに答えを見る。ところが 4 割近くはデータでは閉じない ── 規約の選択と、道具の外にあるもの。「どの種類の扉か」を見分けることが、すでに一つの結果だった。そして 48 回で一度も動かなかった判定も、四つある。

観測で決まらないは、重要でないではない
前シリーズを読んでいなくても大丈夫です 必要な式はその都度示します。ただ、「わかる共形変換」第3回・番外編②③(「光が遅くなる」の正体/宇宙は有限リソースの計算機か/1ティックに1セル)を先に読むと、このシリーズがどこから始まっているかがはっきりします。
本シリーズの立場は一貫しています ── \(c\cdot t=\text{一定}\) は書き換えであって、新しい物理ではない(第3回で証明します)。だからこそ、あらゆる式に安全に代入できる。扱うのは「短さ」であって「正しさ」ではありません。 初期宇宙まで額面で外挿した場合に元素合成と矛盾することは、前シリーズの判決のまま動きません。

「わかる c·t=一定」シリーズ / 前シリーズ「わかる共形変換」(さらにその前の「わかる宇宙論」)の続編です。各話は、わかりやすい語りと、それが物理的に何を意味するかの「種明かし」を必ずセットで運びます。情報理論の量(ビット数、演算回数、パラメータの個数、エントロピー)はいずれも無次元であり、共形変換(=物差しの取り替え)で動きません ── 前シリーズの判定手続きでいう「物理」の列に、最初から属します。ただし本シリーズが扱う「演算回数」はマルゴラス=レヴィティン限界によるエネルギー的上限であって、意味のある計算を指すものではありません。線形膨張(\(c\cdot t=\)一定、\(R_h=ct\))は検証途上の少数派モデルで、低赤方偏移での観測適合をめぐっては Melia らによる支持の主張がある一方、初期宇宙まで外挿した場合は元素合成と矛盾します(Lewis, Barnes & Kaushik 2016, MNRAS 460, 291)。本シリーズは \(c\cdot t=\text{一定}\) を記法の簡潔さという観点から扱うものであり、その正しさを主張するものではありません。学術的な標準はインフレーションを含む \(\Lambda\)CDM モデルです。 ── 各ページはブラウザの「印刷 → PDF に保存」で PDF 化できます。この目次と各話 HTML は同じフォルダに置いてください(リンクが相対パスのため)。