「わかる宇宙論」続編シリーズ

わかる共形変換

前シリーズの合言葉「次元付きは帳簿、無次元だけが物理」を、定理に昇格させる10回。物差しを場所ごとに取り替える操作 ── 共形変換(Weyl 変換)を使って、「光が遅くなる」の正体、重力がスカラー1個に化ける仕組み、そして帳簿では消せないものを突き止めます。

全 17 話(本編10+番外7) 各話:日常語 → 数式 → 動く図 → 種明かし → 練習問題 印刷・PDF化対応
読む順について。 頭から順に読むのがいちばんですが、前シリーズ「わかる宇宙論」を読んだ方は第3回(c·t=一定 の正体)から入るのもおすすめです。必要な式はその都度示しているので、どこから読んでも迷いません。第1回・第2回は道具と動機の紹介、第4回〜第9回が本論、第10回で総括します。
本編
第 1 回動く図つき
物差しは、場所ごとに変えていい

1918年、ワイルは「長さの基準を各点で選べる」として重力と電磁気を統一しようとした。アインシュタインの反論(原子スペクトルが安定しない)で撤回、11年後に位相のゲージとして復活する ── gauge が literally 物差しだった話。g̃ = Ω²g

第 2 回動く図つき
膨張は、原子が縮んでいるだけかもしれない

宇宙は膨張せず、全粒子質量が育ち、原子が縮む ── ヴェッテリヒ(2013)の実在する論文。観測できるのは「銀河間距離 ÷ 原子半径」だけ、という一点で成立する。m̃ = a·m

第 3 回動く図つき
「光が遅くなる」の正体

前シリーズの c·t=一定 に共形変換をかける。二手でミンコフスキーになり、同じ計量を宇宙時間で読むと「光速が遅くなる」が出る。α 不変は条件ではなく定理だった。ds̃² = −c_B(t)²dt² + dx²

第 4 回動く図つき
重力は、スカラー1個になる

作用に共形変換を入れると φ²R̃ + 6(∂φ)² が出る。係数は 4次元の共形結合 1/6。スケール因子は時空の性質ではなく、時空の上に乗った場(ディラトン)だった。φ²R̃ + 6(∂φ)²

第 5 回動く図つき山場
状態方程式は、ポテンシャルだった

フリードマン方程式は「全エネルギーがゼロの玉ころがし」。放射は平ら、物質は坂、Λ は φ⁴、そして c·t=一定 はちょうど質量項。w=−1/3 は三重の境目に立っている。U(φ) ∝ −φ^(1−3w)

第 6 回動く図つき未解決の扉へ
特異点は、座標のせいか

変換後は R̃=0 で測地的に完備 ── ビッグバンが消える。でも曲率は共形不変ではない。無次元比を作ると二つの絵で厳密に同じ式になり、どちらでも壊れる。答えは「半分だけ」。N = mc²t/ℏ

第 7 回動く図つき
光は共形不変、質量はそうでない

マクスウェル作用は 4次元でだけぴったり共形不変。質量はコンプトン波長という具体的な長さを持ち込むのでひっかかる。宇宙の両端で質量が効かなくなる ── ペンローズの CCC へ。Ω^(D−4)

第 8 回動く図つき前シリーズと合流
共形対称性は、量子で壊れる

量子化には細かさの基準が要る ── その瞬間に対称性は失われる。破れの大きさは β 関数で測れて、「1/137 が 1/128 になる」はその測定だった。あなたの体重の99%は、この破れの産物。T^μ_μ = (β/2g)F²

第 9 回動く図つき未解決の扉へ
共形因子は、ゴーストだった

運動項の符号が逆。古典では φ がまるごとゲージなので無害だったが、経路積分は「ゲージだから見ないでおく」を許さない。作用が下に非有界になる ── 量子重力のいちばん古い泣きどころ。S_E ∝ −k²

最終回
第 10 回動く図つき総括
どのフレームが本物か

「問い自体が誤りだ」(フラナガン)と「選ばざるを得ない」(ファラオーニ)を並べ、争点が「何を観測量と呼ぶか」だけであることを示す。10回分の帳簿と物理を、一枚の表に畳んで終わる。答えられるのは無次元不変量だけ

番外編
番外編 ⑦動く図つき完結
アノマリーが、次元と向きを決める

第8回のアノマリーに、二つの使い道。ゼロにしろと要求すると時空の次元が決まり(D=26, 10)、正であれと要求すると繰り込み群に向きが出る(a定理)。しかも証明の道具は第4回のディラトンそのもので、a の正体は球面をまたぐエンタングルメント・エントロピー ── 繰り込み群が不可逆なのは、それが忘却だから。番外編②の情報論と合流して、16話を閉じます。a_UV > a_IR

番外編 ⑥動く図つき本編級
もうひとつの共形変換

共形変換は二種類あった。そして CFT の主役 Δ は、シリーズがずっと計算していた Weyl ウェイトそのもの ── 異常次元は第8回のアノマリーの演算子版で、3次元イジングでは 0.0181489 と7桁測られている。次元付きの入力を一つも使わないブートストラップから六つの臨界指数が出て、水も磁石も同じ数に従う。おまけに安定性を決めるのは m² の符号ではなく Δ が実数かどうかだった。O → Ω^(−Δ) O

番外編 ⑤動く図つき本編級未解決の扉へ
重力に、位相は見えるか

G は次元付き=帳簿だった。物理は粒子ごとの α_G=(m/M_Pl)² で、ニュートリノからトップまで 10²⁵ 開いている ── しかもそれは「その粒子がどれだけブラックホールに近いか」そのもの。電子の重力はフレーバー問題×階層問題に厳密に割れる。そして質量の位相は古典重力には見えず、重力アノマリー経由でだけ映る。映る場所は回転する時空だけだった。R R̃ ∝ Im(Ψ₂²)

番外編 ④動く図つき本編級未解決の扉へ
電子は、なぜ軽いのか

質量に虚数成分はあるか。共形変換は位相に指一本触れられない(Ω が実の正関数だから)── だが位相にはカイラル回転という別のツマミがあり、単独なら消せて、しかも質量を重くする。消せないのは位相差のほう。そして √m を取ると荷電レプトンは 45° にぴたり乗り、電子はゼロ点まであと 2.27°。ニュートリノでは位相で質量が打ち消し合う。m = |m| e^(iθγ₅)

番外編 ③動く図つき本編級
1ティックに、1セル

計算機のいちばん原始的な言葉に落とすと一行になる ── 地平面は1プランク時間に1プランク長だけ進む。セル数=ティック数=8.08×10⁶⁰。そして「なぜ1なのか」の答えは強いエネルギー条件の飽和。物質は焦点化に一切寄与せず、配線は空っぽの宇宙と同じ。dR_H/dt = c

番外編 ②動く図つき本編級未解決の扉へ
宇宙は有限リソースの計算機か

c·t=一定 の動機そのものを裁く。共動ハッブル半径が一定になる唯一の膨張則=アドレス空間が動かない。メモリ10¹²²ビット・クロック140回・ランダウアー限界ぴったり。だが放射だけは救えない(共形不変だから)── そして重力場そのものが帳簿と物理に分かれていた。縛る相手を間違えていた

番外編動く図つき実データで裁く
額面で走らせると、どうなるか

語り方が三つに増えても、モデルの成績は一点も上がらない。a∝t を元素合成まで額面で適用すると、冷却が遅すぎて中性子が枯渇しヘリウムが作れない ── 三つの絵のどれで弁護しても、判決は同じ。n/p = e^(−Q/k_BT_f)