物理好きの高校生・大学生のための読み物シリーズ

考えるAIと物理

進化戦略・CNN・LLM と、熱・量子・くりこみ・情報は、なぜ同じ式で書けるのか。新しい発見(点)を探すのではなく、分野のあいだの線を、換算表と数値の検算つきで一枚の地図にしていくシリーズ。計算はぜんぶ手元で回し、外れた予言もそのまま載せる。

全15話・継続中 各話:先に仕分け表 → 換算表 → 数値で検算 → 正直な線 → 次の候補 PDF 版あり(pdf/)/検算スクリプト同梱
背骨は一文 ── 物理の法則もニューラルネットも、「局所的で、場所によらず同じ規則を、何段も重ねる」という同じ代数でできている。
局所性=小さなカーネル、並進対称性=重みの共有、時間発展=層の積み重ね。だから重みを学習していない CNN が、そのまま分子のスペクトルを出す(第2回)。並列に試すことと順番に試すことは η/N ひとつで交換でき、それは c が時間と長さを換算するのと同じ形をしている(第1回)。ES・自然選択・量子モンテカルロ・強化学習は、対数微分という一行の恒等式の別名だった(第3回)。「峠ではノイズが 0 だから越えられない」という予言は外れ、外れた理由から出た次の予言がフィットなしで当たった(第4回)。そして LLM は最初からボルツマン分布で動いており、逆伝播は時間反転である(第5回)。宇宙の一番大きなスケールでは、地平面は対数の時計で、その上で場は拡散し、結合定数は走る(第6回)。そして出発点の超準解析に戻ると、繰り込みとは無限小と無限大の積の帳簿づけで、超有限の格子は連続体と区別できない(第7回)。拡散は一時刻の量子力学にはなれるが二時刻で切れ、切れ目の正体は負の確率。発散級数の足し方の曖昧さは崩壊率そのもの(第8回)。安定な二重井戸でも級数は曖昧で、埋めるのはインスタントン対。負の確率を作るのは ħ² の一層(第9回)。その負の確率をサンプリングできないのが符号問題で、壁は物理でなく表現にある(第10回)。そして学習にとっても節は難所で、符号を教えれば一瞬、学ぶのは難しい、教えた符号が間違っていれば学ぶしかない(第11回)。そして正しく対称性を入れた局所の網なら、小さい系で学んだ符号が大きい系へそのまま転移する(第12回)。最後に情報と熱の換算へ戻ると、予測に効かない記憶は熱になる(第13回)。そして未回収を放置せず回収しに行き、きれいな補題は外れ、泥臭い公式が生き残った(第14回)。残った二つも半分ずつ閉じ、双曲線は三度目で見えた(第15回)。
本編
第 1 回数値検算つき
c はどこにでもいる ── 換算係数と、その三つの形

進化戦略(ES)の「並列に試す」と「順番に試す」は η/N ひとつで交換できる。辿ると熱方程式、統計力学、拡散モデル、くりこみ群、光円錐まで同じ形の換算が出てくる。換算の形は一次・二次・対数の三つしかない。x∝t / x²∝t / ln x∝t

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第 2 回GPU 計算つき
CNN で物理を計算する ── 四つの部品の物理での名前

カーネルは分散関係、深さは虚時間、チャンネルは既約表現、格子の対称性は結晶場。重みを学習していない CNN で Morse 分子のスペクトルが 4 桁、水素原子の 3d が e_g+t_2g に割れる。格子ゲージ理論では対称性を入れないと何も学べず、ヘリウムは厳密値に一致。He: −2.90369 ± 0.00009 Ha

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第 3 回定理の回
三つの小さな定理 ── 別々の名前で知られていたものが、一本の式だった

ES、Stein、Price、Fisher、VMC、REINFORCE は対数微分という一行の恒等式の別名で、自然選択はフィッシャー計量の勾配上昇。自然選択と ES の差は「ばらつきを好む」2 次の項から始まる。熱方程式の時計とくりこみ群の時計は q 数の q=1 と q>1。∇E[f] = Cov(f, ∇ln p)

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第 4 回予言→検証外れも載せる
σ = 1/3 を深堀りする ── 外れたところから次の予言が出てくる

「ES が局所解に一番閉じ込められるのは σ=1/3」はノイズがガウスなら正しい。本物の ES は裾が重くてずれる。「対称差分 ES は峠を越えられない」は外れ ── 一回の大ジャンプで越えていた。そこから出た脱出時間はフィットなしで 10% 以内。おまけに SGD で 1 ビットを消すと kT ln 2 が見える。ln τ ∝ (N/η)^{1/2}

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第 5 回数値検算つき
LLM は物理で書ける ── 順伝播は冷却、逆伝播は時間反転

逆伝播は随伴方程式で、H = a·f が保存する。softmax の微分は共分散(揺動散逸)。attention はホップフィールドの一更新で、温度を上げると記憶が溶ける。層を重ねるとトークンは凝集し、文脈内学習は順伝播の中の勾配降下。四行の要約を先に、検証は付録に。∂p_i/∂h_j = Cov(1_i,1_j)/T

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第 6 回数値検算つき
宇宙の地平面を CNN で計算する ── 地平面は対数の時計

見える一番長い波長は宇宙年齢とともに伸び、原子からの目盛りは今 88(e 倍で)。これはくりこみ群の時計そのもの。その上で場は拡散し(確率的インフレーション、熱核 CNN で厳密解と 1%、裾は指数でガウスの 10⁹ 倍)、その上で結合定数は走る(箱を地平面にした格子計算)。そして Λ でも相関長でも、スケールが一つ固定されると時計は止まる。ln(ct₀/λ_C) ≈ 88

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第 7 回数値検算つき
無限小で物理を書く ── 超準解析は新しい数を出さない、でも問いが短くなる

出発点だった「ES を超準解析で読む」小論に一周回って戻る。繰り込みとは、無限小と無限大の積のうちどれが標準部分を持つかの帳簿づけ(井戸一個で 1/π の走り)。発散級数の打ち切りの曖昧さはインスタントン。経路積分は超有限の積で、標準部分が厳密解と 10⁻⁷ で一致。「CD とレコードは区別できない」は定理である。st(g · ln(1/ε)) が物理

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第 8 回数値検算つき
拡散は量子になれるか ── 足せない級数と、越えられない節

Nelson の確率力学は一時刻の密度を 0.5% で再現し、二時刻の相関で切れる。切れる場所は波動関数の節で、正の確率では定理として埋められない ── 節の正体は Wigner 関数の負の確率。一方、発散する摂動級数は Borel 和で足せる(非調和振動子で 16 桁)。不安定な側での和の曖昧さは崩壊率そのもので、複素スケーリングと比 1.000。二本とも「正の実数で閉じない部分が物理量」という同じ型。Im(側方 Borel 和) = Γ/2

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第 9 回数値検算つき
曖昧さが物理量になる ── 安定な井戸でも級数は曖昧で、負の確率は一層で生まれる

二重井戸の摂動級数は係数が全部同符号で、安定な系なのに Borel 和が虚部を持つ。その虚部はインスタントン対の大きさ(指数 −1/3g、(π/4)ΔE² の 1.1 倍)で、真のエネルギーが実なのは相殺の結果(Zinn-Justin)。一方、Wigner 関数の Moyal 方程式で負の確率を作るのは ħ² の三階微分項 ── カーネル一層 ── だけで、古典流は正値を保って量子の再帰を失う。崩壊率・インスタントン対・位相、三つの「曖昧さ」が揃う。Im(Borel) ≈ (π/4)ΔE²

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第 10 回数値検算つき
壁は表現にある ── 符号問題は、負の確率をサンプリングできないこと

θ 項のある 2 次元 U(1) で、平均の符号は e^{−VΔf} で消え(L=24 で 10⁻⁶)、モンテカルロの誤差が爆発する。同じ量を双対表現で書くと項がすべて正になり、和一つで厳密に出る。フェルミオンの符号問題は第8回の節そのもの:拡散はボソンに崩れ、節を教えれば 2 が出て、解放すれば e^{−(E_F−E_B)t} で消える。一般には NP 困難の壁、個別には扉。⟨sign⟩ = e^{−VΔf}

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第 11 回数値検算つき外れも載せる
学習は節を越えられるか ── 符号を教えれば一瞬、学ぶのは難しい

J₁–J₂ ハイゼンベルク鎖(12,870 次元)をニューラル量子状態で、サンプリングなしで厳密に学習。符号を持てないネットワークは 60% 外し、符号則を教えれば 10⁻⁴〜10⁻⁶、自分で学ぶと 7〜19%。符号則が壊れる J₂=0.8 では教えた版が 33% に崩れ、位相を学ぶ版の 7% が最良。「教えてから学ぶ」は勝てなかった。拡散・計算・学習の節は同じ一つで、扉がそれぞれ違う。A 60% / B 10⁻⁶ / D 7%

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第 12 回数値検算つき
符号は転移するか ── 入れてはいけない対称性

並進不変な畳み込みは、自分が偶数サイトか奇数サイトかを知らないので、Marshall の符号を原理的に書けない(学習の段階で重なり 0.40)。副格子のラベルを一本足すと、12 サイトで学んだ同じ網が、一度も見ていない 16 サイト・20 サイト(184,756 状態)で符号 100% 一致、重なり 0.98・0.95。符号則が壊れた J₂=0.8 でも 86% が転移し、16 サイトを直接学んだ MLP(7.3%)より良い(3.2%)。対称性は多いほど良いのではなく、系と同じだけ。局所性+正しい対称性 > データ

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第 13 回数値検算つき
記憶の値段 ── 予測に効かない記憶は、熱になる

信号を追いかける粒子の「記憶」のうち、次の信号の予測に効かない分が散逸の下限になる(Still–Sivak–Bell–Crooks)。全部ガウスにして情報量を厳密に出し、12 条件で不等式が成立(比 1.14〜5.2)。信号を精密に追いすぎると覚えた細部が全部熱になる ── 過適合の熱力学。温度・Landauer・非予測情報は「情報 1 nat = kT」の三つの顔。W_diss ≥ kT (I_mem − I_pred)

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第 14 回数値検算つき外れも載せる
未回収を回収しに行く ── 三つ掘って、閉じたのは一つ

第1回・第4回の「正直な線」に残した三つの未検証を潰しにいく。ES の脱出時間の「次数→指数」の補題は六次の井戸で外れ(1/3 を予言、測定は 1/2)、近似なしの一回ジャンプの公式は r=0.002 まで 1% で生き残った。Landauer の 1/τ は障壁を下げても出ず、原因は手順(遅くするとビットが漏れる)。双曲線は打ち切りで未決だが、η/N の交換則は N=16〜512 で成立。補題は死に、公式は生きた

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第 15 回数値検算つき最新
1/τ と双曲線 ── 二つの未決を、半分ずつ閉じる

1/τ 則は実在する:トラップを動かす最適手順の余分な仕事 L²/(τ+2) が 4 桁で出る。消去で出ないのは、障壁を遅く動かすと漏れ、速く動かすと 30 kT 払うから(原因は閉じ、数値は未決)。ES の双曲線は三度目でついに見え、臨界バッチサイズ ≈ 870、折れ曲がりの近くで不変量 ≈ 1。第1回の光円錐座標の読みに、初めて数字が付いた。(S−S_min)(E−E_min) = S_min E_min

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PDF 版:各話の PDF(A4)は pdf/ にあります。
検算スクリプト:各話の数値は scripts/ の Python で再現できます(numpy/torch/scipy、3 次元の計算とヘリウムは GPU 推奨)。出力は *_out.txt。各話の冒頭にある「仕分け表」は、線ごとに 教科書/実在するが新しめ・係争中/この地図の語り/数値合わせ を色分けしたもので、物語より先に置いてあります。