物理好きの高校生・大学生のための読み物シリーズ
温度とは、エネルギーとビットの両替レート ── そもそも k_B は物理定数ではなく単位換算係数で、温度をエネルギーで測れば消えてしまう。効くのは無次元の比 E/k_BT ひとつ。室温の 25 meV という数字だけで、化学も半導体も生命も見通せる。姉妹編「物理の立方体」の c・ℏ・G に、4本目の軸 k_B を足すシリーズ。
2019年、人類は k_B を測るのをやめて値を確定した。温度をエネルギーで測れば k_B=1 にできる ── ケルビンは歴史の遺産で、効くのは無次元の比 E/k_BT だけ。室温の 25 meV ひとつで、何が壊れて何が凍るかが読める。k_BT(300K) ≈ 1/40 eV
なぜ e^(−E/k_BT) なのか。箱に玉をでたらめに配るだけで、指数分布がひとりでに立ち上がる ── その傾きが温度。本体は T ではなく β=1/k_BT のほうで、だから負の温度も無限大の温度も無理なく扱える。β = 1/k_BT
仕事と熱の違いは、追跡しているかどうかだけ(姉妹編「わかる繰り込み」第1回と握手)。自由度あたり ½ k_BT の等分配則は、ℏω > k_BT になると破れる ── だから二原子分子の比熱は階段状に上がる。量子性が温度計に映る回。C が階段になる ⟸ ℏω/k_BT
小さい系・短い時間では、エントロピーが減る事象が実際に起きる。しかも起きる確率が厳密に計算できて P(+σ)/P(−σ) = e^(σ/k_B)。コロイド粒子や RNA の実験で確認済み。第二法則が「法則」に見えるのは、ただ N が大きいから。P(+σ)/P(−σ) = e^(σ/k_B)
エネルギーに上限のある系では T<0 が実現する ── しかもそれは「冷たい」のではなく、無限大の温度より熱い。本体が 1/T だと分かれば当たり前で、1/T は + から − へなめらかに通り抜ける。スピン系(1951)と冷却原子(2013)で実現済み。本体は T でなく 1/T
時間を虚軸に 90 度回す(ウィック回転)と、量子の分配関数が現れる ── そして虚時間を一周するとボルツマン因子がかかる。周期は ℏ/k_BT。温度とは、虚時間方向の周期の逆数だった。姉妹編「わかる宇宙論」第9回の回収。τ の周期 = ℏ/k_BT
等速で飛べば真空、加速すると同じ真空が温度 T=ℏa/2πck_B の熱浴に見える(ウンルー効果)。第1回の「温度は物質の性質ではない」の最終形 ── 温度は観測者の運動状態にも依る。地平面があれば温度がある、という一行でホーキング温度へ受け渡す。T = ℏa / 2πck_B