物理好きの高校生・大学生のための読み物シリーズ
量子論は「奇妙」と言われる。でも奇妙さの多くは、日常の言葉(粒か波か、位置か運動量か)で語るから生まれる。作用を ℏ で割った比 S/ℏ から見れば ── S≫ℏ なら古典、S〜ℏ なら量子、と一本の物差しに畳まれる。姉妹編「わかる相対論」が c の物語なら、こちらは ℏ の物語。
ℏ は自然界の「作用の最小の粒」。エネルギーと振動数、運動量と波長を結ぶ両替レートで、粒と波は同じものの二つの顔。作用を ℏ で割った S/ℏ が、古典(≫1)か量子(〜1)かを決める。E=ℏω, p=ℏk / S/ℏ
粒子は複素数の波 ψ=|ψ|e^(iS/ℏ) で表される。位相はまさに「作用が ℏ 何個ぶんか」。観測にかかるのは確率 |ψ|² だけ。重ね合わせも干渉も、位相の足し算から出る。ψ = |ψ| e^(iS/ℏ)
自然は、あらゆる経路の位相 e^(iS/ℏ) を足し合わせる(ファインマン)。S≫ℏ では作用が停留する経路(最小作用)だけが生き残り、古典の軌道が現れる。古典力学は S/ℏ→∞ の量子論。振幅 = Σ e^(iS/ℏ)
波 ψ が従う規則がシュレディンガー方程式。箱に閉じ込めた波は、両端が節になる定常波しか許されず、エネルギーが「とびとび」になる ── 弦の倍音と同じ理屈。量子化は、波であることの帰結。iℏ ∂ψ/∂t = Ĥψ
位置と運動量は同時には決まらない:Δx·Δp≥ℏ/2。測定の下手さではなく、波は「狭い場所」と「決まった波長」を両立できないから。位相空間に ℏ という最小の面積の粒がある。Δx·Δp ≥ ℏ/2
量子は複数の可能性を重ね持つ。ではなぜ猫は生死どちらかに見えるのか。環境との絡み合い(デコヒーレンス)で重ね合わせの干渉が消え、S/ℏ が巨大な日常は古典に見える。ℏ の物語の締め。重ね合わせ → デコヒーレンス