物理好きの高校生・大学生のための読み物シリーズ

わかる相対論

相対論は難しくない ── ただ、単位のある「時間・距離・速さ・質量」から考えるから複雑になるだけ。すべてを c で割って無次元にすると、相対論は「たった一つの不変量(時空間隔)と、一つの比 β=v/c」の話に畳まれる。姉妹編「わかる場」第2回で残した宿題 ──〈なぜ c が上限か〉── の回収でもある。

本編7・完結 + 番外1 各話:日常語 → 一つの比 → 種明かし → 練習問題 動く図つき/印刷・PDF化対応
背骨は一文 ── c は「速さ」ではなく、時間と空間の両替レート
時間を c で距離に換算すれば(ct)、時間と空間は同じもの。だから速さは単位のない比 β=v/c(第1回)、動く時計の遅れは γ=1/√(1−β²)(第2回)、観測者ごとに違う時間・距離を貫く唯一の不変量が 時空間隔 s²=(ct)²−x²(第3回)。質量は静止のエネルギー E=mc²(第4回)、同時は観測者しだいでも因果順序は不変(第5回)、そして重力は時空の曲がりで、c が上限な理由もそこにある(第6回)。仕上げに ──〈空間が曲がる〉と〈場所ごとに光速が変わる〉は同じ不変量の二つの記述(第7回)。単位のある数字も座標の取り方も舞台装置、残るのは比と不変量だけ。
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本編
第 1 回動く図つき
β ── 速さは、c の何割か

c は「速い乗り物」ではなく、時間と空間の両替レート。時間を ct で距離に直せば時空はひと続き。だから意味のある速さは単位のない割合 β=v/c だけ。日常の β は 10⁻⁸ で、ニュートンは β→0 の近似。β = v/c

第 2 回動く図つき
γ ── 動く時計は、β だけ遅れる

動く時計はゆっくり進む。その遅れ具合 γ は、β だけで決まる純粋な関数 γ=1/√(1−β²)。日常では 1、光速近くで無限大。時間の遅れも長さの縮みも、この一つの γ。γ = 1/√(1−β²)

第 3 回動く図つき
時空間隔 ── 観測者で割れない、たった一つの不変量

時間も距離も観測者ごとにバラバラ(舞台装置)。でも s²=(ct)²−x² だけは、誰が測っても同じ。ローレンツ変換は、この不変量を保つ“時空の回転”。s² = (ct)² − x²

第 4 回動く図つき
E=mc² ── 質量は、静止のエネルギー

質量とは、静止している物体が持つエネルギー。動けば E=γmc²、無次元にすれば E/mc²=γ。質量ゼロなら全エネルギーが運動で、c で走る(わかる場と握手)。E² = (pc)² + (mc²)²

第 5 回動く図つき
同時は、観測者しだい ── でも因果は不変

「今」=ct が一定の面。その切り方が観測者ごとに傾くから、同時はズレる。でも原因と結果の順序=因果順序は、誰から見ても不変。それを守るのが「何ものも c を超えない」。光円錐で一望する。光円錐と因果順序

第 6 回動く図つき
重力は、時空の曲がり ── なぜ c が上限か

加速と重力は見分けられない(等価原理)。重力とは時空の曲がりで、物は曲がった時空をまっすぐ進んでいるだけ。そして c が絶対の上限な理由も、時空の構造に書いてある。重力 = 時空の曲率

第 7 回動く図つき最終回
光速が変わる、と言ってもいい ── 変わる c と、曲がる空間は等価

重力を「空間が曲がる」でなく「場所ごとに光速が変わる(=重力の屈折率 n(x))」と言い換えても、光の曲がりも重力赤方偏移も同じに出る。曲率と可変 c は、同じ不変量の二つの記述(座標の取り方)。局所で測る c と α は不変のまま ── 姉妹編「わかる宇宙論」VSL と地続き。c(x) = c/n(x) ≡ 曲率

番外編
番外編動く図つき
無次元なら一行、単位を入れると悪夢

「効くのは無次元の比」の実演。速度の合成は、ラピディティ θ で見れば θ=θ₁+θ₂ の“ただの足し算”に戻る。水素の基底エネルギーは無次元なら α²/2 の一行、単位を入れると m_e e⁴/(8ε₀²h²) と定数が雪だるま。複雑さの正体は「物差しの持ち運びコスト」。動くスライダーで β の物差しとラピディティの物差しを見比べる。θ = θ₁+θ₂ / E = −½α²