| 線 | 格付け | この日の検証 |
|---|---|---|
| トラップ移動の最適手順:余分な仕事 = L²/(τ+2)(Schmiedl–Seifert 2007) | 教科書(厳密解) | τ = 1〜50 で 1% 以内 |
| 障壁の瞬間的な上げ下げは消去のコストを支配する | 教科書(確率熱力学) | 余分 22〜34 kT |
| 有限時間の最適消去は非自明(Proesmans–Ehrich–Bechhoefer 2020) | 近年の結果 | — (未実装) |
| ES の S = S_min(1 + B_crit/N)、(S/S_min−1)(E/E_min−1) = 1(McCandlish ら 2018) | 経験則(SGD) | ES で B_crit ≈ 870、N ≥ 128 で積 ≈ 1 |
| 双曲線 = 光円錐座標、ln(N/B_crit) = ラピディティ(第1回) | 語り | 数字が付いた |
過減衰の粒子(γ = 1、T = 1)を、ばね定数 1 のトラップに入れ、トラップの中心を時間 τ で距離 L だけ動かす。Schmiedl と Seifert (2007) の最適手順は「最初と最後に L/(τ+2) だけ跳び、間は一定速度」で、余分な仕事は厳密に L²/(τ+2)。
| τ | 1 | 2 | 5 | 10 | 20 | 50 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 最適手順の余分な仕事 | 1.325 | 1.022 | 0.571 | 0.3334 | 0.186 | 0.080 |
| L²/(τ+2) | 1.333 | 1.000 | 0.571 | 0.3333 | 0.182 | 0.077 |
| 素朴な等速 | 1.490 | 1.125 | 0.640 | 0.362 | 0.192 | 0.077 |
最適手順は厳密解と 1% 以内で一致し、τ = 10 では 4 桁。素朴な等速も大きな τ では同じ 1/τ に乗る。系がエルゴード的に保たれる操作なら、1/τ 則はこのとおり出る。第4回で見えなかったのは、消去という操作そのものに原因がある。
第14回で「障壁を低くして遅くするとビットが漏れる」が分かった。では逆に、障壁の上げ下げを一瞬で済ませ、傾けるところだけゆっくりやればどうか。
| τ | 2 | 10 | 50 | 200 |
|---|---|---|---|---|
| ⟨W⟩/kT | 22.4 | 32.6 | 34.5 | 35.1 |
| 成功率 | 0.999 | 0.999 | 1.000 | 1.000 |
| 余分な仕事 | 21.7 | 32.0 | 33.8 | 34.4 |
ビットは保持できたが、仕事が 30 kT を超える。障壁を一瞬で上げると、傾いた井戸の底(x ≈ −1.5)にいる粒子に対してポテンシャルが 8 kT 以上跳ね上がり、その分をそっくり払う。τ を伸ばすほど粒子が深く傾いた底に落ち着くので、むしろ増える。
これで消去の二つの失敗の形が揃った。障壁をゆっくり動かすと漏れ、速く動かすと払う。両方を同時に避けるには、障壁と傾きを連動させた最適手順が要り、それは Proesmans らが数値的に解いたもので、自明な形をしていない。原因は閉じた。1/τ の数値は、最適手順を実装するまで未決のまま残す。
第1回で、大バッチ学習の経験則 (S − S_min)(E − E_min) = S_min E_min を光円錐座標として読み、ES で確かめようとして当たらなかった。第14回は難しすぎて打ち切り。三度目は中間を取る:20 次元、条件数 10、出発点は遠く、上限 2 万ステップ、各 N で歩幅を 14 通りから最適化。
| N | 2 | 8 | 32 | 64 | 128 | 256 | 512 | 1024 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| S(ステップ) | 2561 | 646 | 146 | 80 | 47 | 24 | 16 | 11 |
| E = N·S(サンプル) | 5122 | 5168 | 4672 | 5120 | 6016 | 6144 | 8192 | 11264 |
| S の当てはめ S_min(1 + B_crit/N) | 2534 | 638 | 164 | 85 | 45 | 26 | 16 | 11 |
| (S/S_min − 1)(E/E_min − 1) | 5.7 | 2.4 | −1.8 | 0.16 | 1.35 | 0.67 | 1.09 | 1.10 |
当てはめ:S_min = 5.8 ステップ、E_min = 5056 サンプル、B_crit = 870。
第1回の読みに数字を付けると:余分なステップ S − S_min と余分なサンプル E − E_min が光円錐座標 u、v で、uv = S_min E_min = 2.9×10⁴ が不変。ラピディティ φ = ln(N/B_crit) は N = 2 で −6.1、N = 1024 で +0.16。「光速」B_crit = 870 を超えたのは最後の一点だけである。
第1回は簡単すぎて、大きな N で 3 ステップで届き、ステップの離散性が双曲線を潰した。第14回は難しすぎて、小さな N が上限に掛かった。今回は S が 11〜2561 の範囲に収まり、両端の病気を避けられた。設計の窓は、地形の難しさ(条件数)と打ち切りの上限で決まる。「当たらなかった」のは二度とも設計の失敗で、法則の失敗ではなかった ── ただしこれは当たってから言えることで、当たる前に書いた「地形が簡単すぎる」は半分しか合っていなかった。
scripts/landauer3.py、scripts/hyperbola3.py(出力 *_out.txt)