体重計の数字の裏で、ほんとうは何が起きているのか
体重計に乗ると数字が出る。買い物袋は、重いと腕が痛い。でも ── 「重さ」って、そもそも何でしょう。 当たり前すぎて、ふだん誰も問いません。このシリーズ「わかる質量」は、その当たり前を一枚ずつはがしていきます。まずは数式ぬきで、全体の地図を広げます。
重い荷物は、押してもなかなか動き出しません。そして、動いているものが重いと、今度はなかなか止まりません。「重さ」の正体のひとつは、この動かしにくさ(慣性)です。軽いものはひょいと動き、重いものはどっしり構えて、速度を変えるのに手間がかかる。
ここで、重さゼロの代表 ── 光を見ます。光は、生まれた瞬間から最高速度で走っています。ゆっくりの光も、止まっている光も、この世に存在しません。 どんなに追いかけても、光は必ず同じ速さで逃げていく。
これが決定的なヒントです。止まれないもの=重さゼロ。止まれるもの=重さを持つ。 重さとは、つきつめれば「止まれること」なんです。
止まれる = 重さがある
止まれない(いつも光速) = 重さゼロ
止まれるものの中には、何が詰まっているのでしょう。答えは ── エネルギーです。止まっているものの中に、エネルギーがぎゅっと閉じ込められている。それが重さの正体。有名な E=mc² という式は、むずかしく見えて、言っていることはシンプルです ── 「重さとは、閉じ込められたエネルギーだ」。
しかも、その圧縮率がすさまじい。角砂糖ひとつぶんの重さを、もし全部エネルギーに変えられたら、街ひとつを動かせるほどの力になります。重さとは、それほど濃く圧縮されたエネルギーの塊なのです。
いちばんの種明かしがこれです。あなたの体重のほとんどは、体をつくる部品の重さの「合計」ではありません。
体は原子でできていて、原子の芯には陽子や中性子があります。その陽子の重さの約99%は、中で暴れるクォークを縛りつけている力の「勢い(エネルギー)」が、E=mc² で重さに化けたもの。部品そのものの重さは、ほんの1%ほどにすぎません。つまり重さは、「部品の足し算」ではなく「閉じ込められた勢い」だったのです。
「重さはどこから来るのか」を、姉妹シリーズ「わかる宇宙論」の合言葉 c・t=一定(光速 × 宇宙年齢 = 一定)というレンズで、順番にたどります。
このシリーズでも「光速が遅くなる」などの表現は、わかりやすくするための等価な言い換え(投影)です。局所的に測る光速や、単位の消えた比(微細構造定数 α)は不変。c・t=一定 は座標・単位の選び方であって、質量そのものを新しく作り出す魔法ではありません。
だからこのレンズが正当に効くところと、効かせてはいけないところを、各回できちんと線引きします。「効かないのに効かせる」ことをしない ── それがこのシリーズの誠実さです。
重さの正体は、動かしにくさ(慣性)。その本質は「止まれること」で、止まれないもの(いつも光速の光)は重さゼロ。そして止まっているものの中には、E=mc² のとおりエネルギーが閉じ込められている。重さは「部品の足し算」ではなく、閉じ込められた勢いそのもの ── あなたの体重の99%が、その証拠でした。
この地図を手に、次回から一枚ずつ確かめていきます。まず追うのは、この導入でいちばん軽く流した一点 ── 「止まれる=重い」を、ちゃんと式にするとどうなるか。
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