考える波 第 19 回 / 第 VIII 部・実効定数を微分する

宇宙年齢より長い半減期を、1 秒 で測る

崩壊定数は、虚数の周波数だった ──
だから一周期 待たなくていい 第 3 回で「周期が宇宙年齢より長い成分は、定数と区別がつかない」と書きました。
では \(^{232}\)Th の半減期 140.5 億年 は?(宇宙年齢は 137.9 億年)
★ 答え ── 1 グラムあれば、毎秒 4057 回。1 秒 で測れます。

必要な道具:第 3, 4, 6, 9, 11, 13 回計算:kenshou/jikan.js

これは、この連載の観測窓の議論に対する正面からの反例に見えます
調べてみたら、反例ではありませんでした ── そして、なぜ反例でないのかが面白い。

01宇宙年齢のそばには、何があるか

核種半減期 [年]宇宙年齢との比
\(^{235}\)U\(7.04\times10^8\)0.051
\(^{40}\)K\(1.248\times10^9\)0.091
\(^{238}\)U\(4.468\times10^9\)0.324
★ 宇宙年齢\(1.379\times10^{10}\)1.000
\(^{232}\)Th\(1.405\times10^{10}\)1.019
\(^{187}\)Re\(4.16\times10^{10}\)3.02
\(^{87}\)Rb\(4.97\times10^{10}\)3.61
\(^{147}\)Sm\(1.06\times10^{11}\)7.69

\(^{232}\)Th の半減期と宇宙年齢は、1.02 倍 ── ほとんど ぴったり重なっています。
では、これらは「定数と区別がつかない」のか?

02核心 ── 崩壊定数は虚軸に住んでいる

振動と減衰を、同じ形で書く $$\text{振動}:\ e^{i\omega t}\quad(\omega\ \text{は実数}),\qquad \text{減衰}:\ e^{-\lambda t}=e^{i(i\lambda)t}\quad(\omega=i\lambda\ \text{は純虚数})$$
振る舞い測り方必要な観測時間
実軸 \(\omega\)振動する位相が一周するのを見る★ 周期の程度
虚軸 \(i\lambda\)単調に減る傾き(=崩壊の回数)を数える★ いくらでも短くてよい

02節の中心 ── この回いちばんの発見

振動の周波数は、一周期 待たないと分からない。
減衰の速さは、一瞬でも分かる。数えればいいから。

崩壊定数は、複素周波数平面の虚軸の上にいます。これは第 11 回の拡散(\(\omega=-iDk^2\))と同じ家族です。

第 3 回の「\(\omega=0\) には手が届かない」は、周期的な成分についての話でした。単調な減衰には、当てはまりません。

\(^{232}\)Th を 1 グラム 用意する $$N=\frac{N_A}{232.04}=2.595\times10^{21},\qquad \lambda=\frac{\ln2}{T_{1/2}}=1.563\times10^{-18}\ \text{s}^{-1}$$ $$A=\lambda N=\mathbf{4057}\ \text{Bq/g}\qquad\text{★ 毎秒 4057 回}$$

02節の結論

半減期が宇宙年齢より長い物質が、1 グラムで毎秒 4000 回 崩壊します。
1 秒 測れば崩壊定数は 1.6 % の精度で決まり(\(\sqrt{4057}/4057\))、1 日 測れば 0.017 %。

同じ数字を実軸に置いたら ── 周期 \(4.4\times10^{17}\) 秒 = 140 億年 の振動です。一周期すら見えません。

同じ \(1.6\times10^{-18}\,\mathrm{s^{-1}}\) が、実軸なら測れず、虚軸なら 1 秒 で測れる。

03なぜ測れるのか ── 時間平均を集団平均で置き換えた

試料原子数崩壊/秒1 回 待つ時間
原子 1 個1\(1.56\times10^{-18}\)203 億年
1 ng\(2.60\times10^{12}\)\(4.06\times10^{-6}\)2.8 日
1 mg\(2.60\times10^{18}\)4.06246 ms
1 g\(2.60\times10^{21}\)4057246 µs
1 kg\(2.60\times10^{24}\)\(4.06\times10^6\)246 ns

03節 ── 第 9 回の裏返し

第 9 回では「短い時間しか見なければ、周波数はぼやける」でした。
ここでやっているのは、その裏返しです ── 一つの系を長く見る代わりに、たくさんの系を一度に見る。

時間平均を、集団平均で置き換えた。
振動ではこれができません(位相がばらばらなので、足すと消える)。崩壊でできるのは、各原子核が独立で、位相を持たないからです。

── ★ 実軸には位相があり、虚軸にはない。だから虚軸だけが、数を増やすことで時間を買える。

04半減期の梯子 ── 65 桁

崩壊半減期 [s]\(\Gamma=\hbar/\tau\) [eV]宇宙年齢との比
\(\Delta(1232)\) 共鳴\(5.6\times10^{-24}\)\(8.1\times10^{7}\)\(1.3\times10^{-41}\)
\(\pi^0\)\(8.4\times10^{-17}\)5.4\(1.9\times10^{-34}\)
\(\mu\)\(2.2\times10^{-6}\)\(2.1\times10^{-10}\)\(5.1\times10^{-24}\)
中性子878.4\(5.2\times10^{-19}\)\(2.0\times10^{-15}\)
\(^{14}\)C\(1.8\times10^{11}\)\(2.5\times10^{-27}\)\(4.1\times10^{-7}\)
\(^{232}\)Th\(4.4\times10^{17}\)\(1.0\times10^{-33}\)1.02
\(^{128}\)Te(\(2\nu\beta\beta\))\(6.9\times10^{31}\)\(6.6\times10^{-48}\)\(1.6\times10^{14}\)
陽子崩壊(下限)\(5.0\times10^{41}\)\(9.0\times10^{-58}\)\(1.2\times10^{24}\)

04節 ── 自然界でもっとも鋭い「線」

第 9 回で「\(^{57}\)Fe の自然幅 \(\Gamma/E=3.24\times10^{-13}\) は極端に鋭い」と書きました。
\(^{232}\)Th の相対線幅は ── \(\Gamma/Q=2.52\times10^{-40}\)。27 桁 鋭い。

★ ただしこの鋭さは使えません。共鳴として叩くには、それだけ精密な励起源が要るからです。
だから数えるほうを使う ── ★ 実軸は「叩く」、虚軸は「数える」。

05宇宙年齢のそばにあるものだけが、時計になれる

年代測定に使える核種には、はっきりした条件があります ── 速すぎると残っておらず、遅すぎると減っていない。

最適な半減期を、計算で出す $$\delta t=\frac{1}{\lambda}\cdot\frac{1}{\sqrt N}=\frac{e^{\lambda t/2}}{\lambda\sqrt{N_0}}\quad\Longrightarrow\quad \frac{d}{d\lambda}\Bigl[\frac{\lambda t}{2}-\ln\lambda\Bigr]=0\quad\Longrightarrow\quad \lambda=\frac2t$$ $$T_{1/2}^{\rm opt}=\frac{\ln2\cdot t}{2}=\mathbf{47.8\ 億年}$$
核種半減期 [億年]138 億年 後の残存率最適値との比
\(^{235}\)U7.04\(1.3\times10^{-6}\)0.147
\(^{40}\)K12.48\(4.7\times10^{-4}\)0.261
\(^{238}\)U44.680.118★ 0.935
\(^{232}\)Th140.500.5072.94
\(^{87}\)Rb497.000.82510.4

05節 ── \(^{238}\)U は、7 % 以内 で理想の時計

\(^{238}\)U(44.68 億年)が、最適値 47.8 億年 の 0.935 倍。

★ もちろん偶然です。自然が我々のために選んだわけではありません。
でも「なぜ地質学が \(^{238}\)U を使うのか」の理由にはなっています ── 使えるものが、たまたまそこにあった。

判定:この最適化は本稿の計算で、理想化されています(実際の年代測定は娘核種との比を質量分析で測るので、条件が違います)。

06崩壊定数は、本当に定数か

主張/現象判定中身
季節変動の主張(2008〜)× ほぼ否定地下実験・恒温実験で再現せず。環境効果が有力
\(^{7}\)Be の電子捕獲○ 本物化学環境で 0.1〜1 % 変わる(\(\mathrm{C_{60}}\) 内包など)
完全電離した \(^{187}\)Re◎ 本物★ 416 億年 → 32.9 年(\(1.3\times10^9\) 倍)
\(\alpha\)(微細構造定数)依存◎ 理論★ \(\alpha\) 崩壊は指数関数的に効く(07節)

06節 ── 崩壊定数は原子核だけの性質ではない

いちばん強烈なのは \(^{187}\)Re です。中性原子なら半減期 416 億年。電子を全部 剥がすと 32.9 年 ── \(1.3\times10^9\) 倍。
束縛状態へのベータ崩壊という行き先が開くからです。

★ 波の言葉では ── 終状態のモード密度が変わると、遷移率が変わる。
共振器に入れると自然放出が変わる(パーセル効果)のと、まったく同じ理屈です。

つまり「崩壊定数」は系全体の性質であって、原子核に貼りついた値ではありません。第 17 回で「質量は環境で変わる」と書いたのと、同じ構造です。

07\(\alpha\) 崩壊は、微細構造定数の超高感度センサー

ガモフ因子が指数関数的に効く $$\lambda\propto e^{-2\pi\eta},\qquad \eta=\frac{Z_dZ_\alpha\,\alpha\,c}{v}\qquad\Longrightarrow\qquad \frac{d\ln\lambda}{d\ln\alpha}=-2\pi\eta$$
親核娘核 \(Z\)\(Q\) [MeV]\(v/c\)\(\eta\)\(-2\pi\eta\)
\(^{238}\)U904.2700.0478727.44\(-172.4\)
\(^{232}\)Th884.0820.0468027.44\(-172.4\)
\(^{226}\)Ra864.8710.0511224.55\(-154.3\)
\(^{210}\)Po825.4070.0538622.22\(-139.6\)

\(^{238}\)U で \(-172\) ── \(\alpha\) が 0.1 % 変われば、崩壊率が 17 % 変わります。
第 4 回で「\(\alpha\) の変化は \(10^{-17}\)/年 以下」と書きましたが、\(\alpha\) 崩壊はその制限を得るための、もっとも感度の高い道具の一つです。

08弱い力はなぜ弱いのか ── 結合ではなく遮断のせい

まず結合の強さを比べる $$\alpha_{\rm em}(m_Z)=\frac{1}{127.95}=0.00782,\qquad \alpha_W=\frac{\alpha_{\rm em}}{\sin^2\theta_W}=0.0338=\frac{1}{29.6}$$

★ 弱い相互作用の結合は、電磁気より 4.3 倍 強い

運動量移行 \(q\)弱 / 電磁 の比どこ
1 MeV\(6.7\times10^{-10}\)原子核のベータ崩壊
1 GeV\(6.7\times10^{-4}\)核子の内部
10 GeV\(6.6\times10^{-2}\)
80.4 GeV(\(M_W\))2.16★ 同じ強さに ── 電弱統一
1 TeV4.30

08節 ── 三つの話が、一本の式に合流する

弱いのは結合ではなくプロパゲータです。振幅 \(\propto g^2/(q^2-M_W^2)\) なので、低エネルギーでは \(g^2/M_W^2\) に潰れる。

第 6 回の言葉に翻訳すると ── \(M_W\) は遮断周波数。到達距離 \(\hbar/(M_Wc)=2.46\times10^{-3}\) fm。遮断より下ではエバネッセントになり、指数関数的に減衰する。

★ そして第 18 回で見たとおり、その遮断を作っているのはヒッグス凝縮です。

「弱い力が弱い」「超伝導体が磁場を締め出す」「陽子が重い」──
全部 同じ「分散関係に切片ができる」話でした。

09\(G_F\) から、ミューオンの寿命を出す

弱い崩壊定数が本当に効いていることの確認 $$\Gamma_\mu=\frac{G_F^2m_\mu^5}{192\pi^3}\quad\Longrightarrow\quad \tau_\mu=2.187\ \text{µs}\qquad(\text{実測}\ 2.197\ \text{µs}、\ \mathbf{0.44\,\%\ 一致})$$

\(\tau\propto1/m^5\) という強い依存に注目してください。タウ粒子で試します。

タウの寿命から、何が出るか $$(m_\tau/m_\mu)^5=1.345\times10^6\ \Rightarrow\ \tau_\tau^{\rm 予言}=1.633\times10^{-12}\ \text{s}\quad(\text{崩壊路が 1 本 なら})$$ $$\tau_\tau^{\rm 実測}=2.903\times10^{-13}\ \text{s}\qquad\Longrightarrow\qquad \text{比}=\mathbf{5.63}$$

09節 ── タウの寿命から、クォークの色の数が出る

5.6 倍 速く崩壊している ── 崩壊路が 5.6 本 あるということ。数えてみます:

\(\tau\to e\nu\nu\):1 本 / \(\tau\to\mu\nu\nu\):1 本 / \(\tau\to\) ハドロン(\(u\bar d\)):★ 色が 3 つ あるので 3 本

合計 \(=2+3\times(1+\alpha_s/\pi)=2+3\times1.105=\mathbf{5.32}\)  実測から出た本数 \(=\mathbf{5.63}\)

6 % の一致。タウの寿命から、クォークの色の数 3 が出てきました。
判定:これは既知の古典的な議論の再現で、新しい主張ではありません(カビボ角やカットの扱いを省いているので、この精度が限界)。

10中性子の寿命が、宇宙の組成を決めた

最後に、弱い崩壊定数が宇宙に残した跡を見ます。ビッグバン元素合成の筋書きはこうです ── ① \(T\approx0.7\) MeV(\(t\approx1\) 秒)で弱い反応が凍結して \(n/p\approx1/6\)、② そこから数百秒 中性子が崩壊し続ける、③ 重水素の関門が開くと、残った中性子が全部 \(^4\)He になる。

\(\tau_n\) [秒]250 秒 後の \(n/p\)ヘリウム質量比 \(Y_p\)
220(1/4 倍)0.05340.101
439(1/2 倍)0.09430.172
878.4(実測)0.12540.223
1757(2 倍)0.14460.253
\(\infty\)(崩壊しない)0.16670.286

10節 ── 弱い崩壊定数が、宇宙のヘリウム量を決めている

粗い見積もりで \(Y_p=0.223\)、観測は 0.245 ── 1 割 の差です(凍結温度と \(t_{\rm nuc}\) を丸めているため。本物の計算は 0.5 % で合います)。

★ 大事なのは感度のほうです ── 中性子の寿命が 4 分の 1 なら \(Y_p=0.10\)、2 倍 なら 0.25。

そして中性子の寿命 878 秒 と、元素合成の時刻 \(\sim250\) 秒 が同じ桁であるのは、この物語が成立するための条件でした。
寿命が 10 倍 短ければ中性子は全部 消え、水素だけの宇宙になっていた。

練習問題

  1. 「宇宙年齢より長い周期は測れない」と「宇宙年齢より長い半減期は測れる」は矛盾しないか。
    答えを見る
    矛盾しません。測っているものが違います。
    周期 \(T\) の振動を測るとは、位相が \(2\pi\) 進むのを見ることです。位相は一つの系に一つしかないので、待つしかない。
    半減期を測るとは、単位時間あたり何個 減るかを数えることです。原子核は \(10^{21}\) 個 あるので、数を増やせば時間を買えます。
    実軸には位相があり、虚軸にはない ── この一点が、両者を分けています。
  2. では、\(\alpha\) の「周期 100 億年 の振動」は、数を増やせば測れるか。
    答えを見る
    測れません。\(\alpha\) は場所によらず同じ一つの値なので、「独立な試料をたくさん用意する」ことができないからです。
    原子核が \(10^{21}\) 個 あるのは、それぞれが独立に崩壊するから意味がありました。\(\alpha\) の振動は、全部の試料で同位相です。
    だから第 4 回の「観測窓」の壁は、\(\alpha\) については本物のまま。
    ★ ただし抜け道はあります ── 遠くを見れば、過去を見られる(クェーサー吸収線、オクロ天然原子炉)。空間を時間に読み替える手です。
  3. \(^{187}\)Re が電離で \(10^9\) 倍 速く崩壊することの、この連載における位置づけは。
    答えを見る
    「定数は環境のパラメータである」ことの、いちばん極端な実例です。
    第 17 回で有効質量が材料によって 4 桁 変わるのを見ました。ここでは崩壊定数が 9 桁 変わります。
    ★ 波の言葉では、どちらも終状態(行き先のモード)が変わったという話です ── 有効質量はバンドの形、崩壊定数はモード密度。
    「定数」と呼ばれているものの多くは、実は系と環境の組み合わせの性質でした。

まとめ 実軸には位相があり、虚軸にはない

\(^{232}\)Th の半減期 140.5 億年 は、宇宙年齢の 1.02 倍。それでも 1 グラムあれば毎秒 4057 回 崩壊し、1 秒 で 1.6 % の精度で測れます。

理由は単純でした ── 崩壊定数は虚数の周波数だから(\(e^{-\lambda t}=e^{i(i\lambda)t}\))。振動は一周期 待たないと分からないが、減衰は傾きを数えれば一瞬で分かる。第 3 回の「\(\omega=0\) には手が届かない」は、周期的な成分についての話でした。

できる理由は時間平均を集団平均で置き換えられるから。そしてそれができるのは、各原子核が独立で位相を持たないからです ── ★ 実軸には位相があり、虚軸にはない。

半減期の梯子は 65 桁(\(\Delta\) 共鳴から陽子崩壊まで)。\(^{232}\)Th の相対線幅 \(2.5\times10^{-40}\) は \(^{57}\)Fe より 27 桁 鋭いが、叩けないので数えるしかない。

時計になれるのは宇宙年齢のそばにあるものだけで、最適な半減期 47.8 億年 に対して \(^{238}\)U は 0.935 倍。そして崩壊定数は定数ではありません ── 完全電離した \(^{187}\)Re は \(10^9\) 倍 速く崩壊します。

弱い力が弱いのは結合のせいではなく(\(\alpha_W\) は \(\alpha_{\rm em}\) の 4.3 倍)、\(M_W\) という遮断のせいでした。\(G_F\) からミューオンの寿命が 0.44 % で出て、タウの寿命からはクォークの色の数 3 が出ます。そして中性子の寿命 878 秒 が、宇宙のヘリウム量 \(Y_p\) を決めています。

★ 「宇宙年齢より長いものは定数と区別がつかない」は、振動についての話だった。
崩壊は虚軸に住んでいるので、一周期 待たずに測れる。

この文書は「考える波」シリーズ第 19 回です。計算は kenshou/jikan.js で行っています。本回の数値について:半減期・崩壊の Q 値・寿命はいずれも文献値(PDG・NNDC の代表値)で、本稿が測ったものではありません。「最適な半減期 47.8 億年」は本稿の計算ですが、残存核数のポアソン統計だけを考えた理想化です ── 実際の年代測定は娘核種との比を質量分析で測るので、最適条件は違います(この意味で \(^{238}\)U が 0.935 倍 というのは面白い一致であって、地質学がそう選んだ理由の説明ではありません)。崩壊率の季節変動については、主張と反証の両方が文献にあり、本稿は「再現性がない」という現在の多数意見を採っています。\(^{187}\)Re の完全電離時の半減期 32.9 年 は GSI の実験値です。\(\alpha\) 崩壊の感度 \(-2\pi\eta=-172\) は障壁の寄与だけで、\(Q\) 値の \(\alpha\) 依存を入れると文献では \(10^3\) 程度とされます。ミューオン寿命の式はツリーレベルで、位相空間と輻射補正を省いています(それで 0.44 %)。タウの崩壊路の数え方はカビボ角を無視した粗い議論です。ビッグバン元素合成の \(Y_p=0.223\) は凍結比 1/6 と \(t_{\rm nuc}=250\) 秒 を仮定した粗い見積もりで、観測値 0.245 とは 1 割 ずれます ── 本回が示したのは値ではなく \(\tau_n\) への感度です。 ── 印刷する場合はブラウザの「印刷」から「PDF に保存」を。

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