考える波 第 13 回 / 第 VI 部・階数を複素数まで広げる

音色を変えずに、時間だけを伸ばす操作

虚数階微分 ──
スケールを変える世界の道具 階数 \(\alpha\) を虚数にすると、\((i\omega)^{i\beta}\) の振幅は \(\omega\) に依らない定数になり、
位相だけが \(\beta\ln\omega\) で回ります ── 全域通過フィルタです。
★ 実数階が時間並進の道具なら、虚数階はスケール変換の道具でした。

必要な道具:第 1, 2, 5, 8 回計算:kenshou/kyosu.js

第 2 回で「半分だけ微分する」をやりました。指数を実数に広げたのだから、虚数にも広げられるはずです。
やってみたら ── まったく別の物理が出てきました。

01指数を虚数にすると、何が起きるか

対数を取って、\(i\) を代入するだけ $$(i\omega)^{i\beta}=\exp\bigl(i\beta\ln(i\omega)\bigr)=\exp\Bigl(i\beta\bigl[\ln\omega+i\tfrac{\pi}{2}\bigr]\Bigr)=\underbrace{e^{-\beta\pi/2}}_{\text{振幅}}\cdot\underbrace{e^{\,i\beta\ln\omega}}_{\text{位相}}$$

01節の中心 ── 二つに分かれた

振幅 \(=e^{-\beta\pi/2}\) ── \(\omega\) に依らないただの定数。全周波数を同じだけ通す。
位相 \(=\beta\ln\omega\) ── 周波数の対数に比例。

★ つまり虚数階微分は 全域通過(オールパス)フィルタです。
音で言えば ── 音色をまったく変えずに、時間の並び方だけを変える操作。

\(\beta\)振幅 \(e^{-\beta\pi/2}\)\(\omega=1\) の位相\(\omega=10\)\(\omega=100\)
\(-1\)4.810\(-131.9°\)\(-263.9°\)
\(-0.5\)2.193\(-66.0°\)\(-131.9°\)
01.000
10.2079\(+131.9°\)\(+263.9°\)
20.04321\(+263.9°\)\(+527.7°\)

周波数が 10 倍 になるたび、位相が同じだけ回る。これがこの回のすべてです。

02音で確かめる ── クリックが双曲線チャープになる

先に作法を決めておく \((i\omega)^{i\beta}\) はそのままでは \(H(-\omega)=H^*(\omega)\) を満たしません(出力が複素数になる)。
そこで正の周波数で \((i\omega)^{i\beta}\) を定義し、負側は共役で埋めます ── ヒルベルト変換と同じ作法です。すると \(|H|=e^{-\beta\pi/2}\)(全域一定)、\(\arg H=\beta\ln\omega\)(正の側)。
\(\beta\)実測 出力/入力理論 \(e^{-\beta\pi/2}\)相対誤差
\(-1\)4.8104774.810477\(<10^{-12}\)
\(-0.5\)2.1932802.193280\(<10^{-12}\)
10.20787960.2078796\(<10^{-12}\)
20.04321390.0432139\(<10^{-12}\)

確認 1:白色雑音を通して実効値を比べる(本当に全域通過か)

振幅スペクトルには指一本 触れていません。では何が変わるのか ── 群遅延です。

位相を微分するだけ $$\varphi(\omega)=\beta\ln\omega\quad\Longrightarrow\quad \tau_g=-\frac{d\varphi}{d\omega}=-\frac{\beta}{\omega}$$

★ ずれが \(1/\omega\) に比例する ── 低い音ほど大きくずれる

周波数 [Hz]実測ずれ [ms]理論 \(-\beta/\omega\) [ms]差 [µs]
200\(-2.3950\)\(-2.3873\)\(-7.6\)
400\(-1.1946\)\(-1.1937\)\(-0.95\)
800\(-0.5969\)\(-0.5968\)\(-0.12\)
1600\(-0.2984\)\(-0.2984\)\(-0.01\)

確認 2:ガウス窓つき純音(トーンバースト)の重心の移動、\(\beta=3\)

02節の結論

周波数が 2 倍 になるごとに、ずれは半分。きっちり \(1/f\) です。
だからクリック(全周波数が同時に鳴る音)を入れると、出てくるのは双曲線チャープ ── 音程がすーっと滑る音。

★ 音色は変わらないのに、時間だけが伸びる。純粋な分散です。

03インパルス応答を、閉じた形で書く

クリックを入れたときの出力 \(h(t)\) を、手で積分します。\(x=\omega t\) と置くと \(t\) が積分の外に出る ── それが虚数階の急所です。

スケール変換で \(t\) を追い出す $$h(t)=\frac{e^{-\beta\pi/2}}{\pi}\,\mathrm{Re}\int_0^\infty \omega^{i\beta}e^{i\omega t}\,d\omega =\frac{e^{-\beta\pi/2}}{\pi}\,\mathrm{Re}\Bigl[t^{-1-i\beta}\underbrace{\int_0^\infty x^{i\beta}e^{ix}dx}_{t\text{ に依らない}}\Bigr]$$ $$\int_0^\infty x^{i\beta}e^{ix}dx=\Gamma(1+i\beta)\,e^{i\pi(1+i\beta)/2}$$

03節の中心 ── 対数目盛りの上の正弦波

$$t\,h(t)=A(\beta)\,\sin\bigl(\beta\ln t-\arg\Gamma(1+i\beta)\bigr)$$

$$A(\beta)=\frac{e^{-\beta\pi}\,|\Gamma(1+i\beta)|}{\pi},\qquad |\Gamma(1+i\beta)|=\sqrt{\frac{\pi\beta}{\sinh\pi\beta}}$$

★ \(t\) を掛けると、\(\ln t\) についての純粋な正弦波になります。周期は \(2\pi/\beta\)。
時間軸を対数目盛りで見ると、きれいに周期的 ── これが「対数周期性」です。

\(\beta\)\(\varepsilon\)数値積分(実部)(虚部)相対誤差
10.05\(3.9337900\times10^{-2}\)\(1.0682146\times10^{-1}\)\(6.4\times10^{-13}\)
10.01\(3.3582150\times10^{-2}\)\(1.0423027\times10^{-1}\)\(4.6\times10^{-13}\)
20.05\(-5.6342955\times10^{-4}\)\(7.2846544\times10^{-3}\)\(1.9\times10^{-12}\)
30.01\(-3.1192639\times10^{-4}\)\(1.8175677\times10^{-4}\)\(1.9\times10^{-11}\)

確認 3:\(\int_0^\infty x^{i\beta}e^{ix-\varepsilon x}dx\) の数値積分 vs 閉じた式 \(\Gamma(1+i\beta)/(\varepsilon-i)^{1+i\beta}\)

\(x\to0\) で位相 \(\beta\ln x\) が無限に速く回るので、そこだけ \(x=e^u\) に置換して積分しています ── 11〜13 桁 一致

04ここに落とし穴がある ── 裾は \(e^{-\beta\pi}\) で潰れる

\(\beta\)裾の振幅 \(A(\beta)\)対数目盛りの周期 \(2\pi/\beta\)
0.1\(2.31\times10^{-1}\)62.83
0.5\(5.47\times10^{-2}\)12.57
1\(7.17\times10^{-3}\)6.283
2\(9.11\times10^{-5}\)3.142
3\(1.00\times10^{-6}\)2.094
5\(1.04\times10^{-10}\)1.257

04節 ── なぜ対数周期性は「見つけにくい」のか

\(\beta\) を大きくすると振動は速くなりますが、振幅は \(e^{-\beta\pi}\) で潰れます。
\(\beta=3\) でもう \(10^{-6}\) ── FFT の丸め誤差に埋もれて、時間領域では見えません。

★ 実際、最初は FFT でインパルス応答を直接測ろうとして失敗しました。
測れていたのは DC とナイキスト成分を落としたことによる人工物(\(10^{-5}\) 程度)で、本物の信号(\(10^{-6}\))より一桁 大きかった。閉じた形を先に出さなければ、気づかないところでした。

これは第 8 節の「地震や金融の対数周期は論争中」と、雰囲気としては地続きです ── 振幅が小さいものは、統計的に分離しにくい。
(ただし \(A(\beta)\) はこの時間応答の話であって、一般の対数周期現象の振幅を決める式ではありません。)

05何の生成子なのか ── スケール変換

位相が \(\ln\omega\) に比例する、という性質を言い換えます。周波数を \(\lambda\) 倍 に伸ばしてみる。

対数は掛け算を足し算にする $$\varphi(\lambda\omega)=\beta\ln(\lambda\omega)=\beta\ln\omega+\beta\ln\lambda$$

★ 位相が「一定だけ」ずれる。形はまったく変わらない

階数記号振幅位相対応する対称性自然な変換
実数階 \(\alpha\)\((i\omega)^\alpha\)\(\omega^\alpha\)\(\alpha\pi/2\)(一定)時間並進フーリエ変換
虚数階 \(i\beta\)\((i\omega)^{i\beta}\)定数\(\beta\ln\omega\)★ スケール変換★ メリン変換

05節 ── この回いちばんの発見

実数階微分は「時間をずらす」世界の道具、
虚数階微分は「スケールを変える」世界の道具。

フーリエ変換の核 \(e^{i\omega t}\) が時間並進の固有関数であるのと同じく、メリン変換の核 \(t^{i\beta}\) はスケール変換の固有関数です。
虚数階微分は、そのメリン核そのものでした。

音で言えば ── 実数階は音色を変え、虚数階は音色を変えずに時間を伸ばす。

06物理はどこで虚数階を使っているか ── \(1/r^2\) ポテンシャル

引力の \(1/r^2\) ポテンシャルを考えます(3 次元、s 波)。\(r\to0\) では \(E\) が効かないので \(u\propto r^s\) と置くと:

指数だけの方程式になる $$-\frac{\hbar^2}{2m}u''-\frac{\lambda\hbar^2}{2m}\frac{u}{r^2}=Eu\quad\Longrightarrow\quad s(s-1)+\lambda=0\quad\Longrightarrow\quad s=\frac12\pm\sqrt{\frac14-\lambda}$$ $$\lambda>\frac14\ \Rightarrow\ s=\frac12\pm is_0,\quad s_0=\sqrt{\lambda-\tfrac14}\quad\Longrightarrow\quad u\propto\sqrt{r}\,\cos(s_0\ln r+\delta)$$
\(\lambda\)(引力の強さ)\(\sqrt{1/4-\lambda}\)\(s_0\)振る舞い
00.5000──安定。基底状態がある
0.200.2236──安定
0.250.0000──★ ちょうど臨界
0.50虚数0.5000★ 対数周期。中心へ落ちる
1.00虚数0.8660対数周期
2.00虚数1.3229対数周期

06節の結論

\(\lambda=1/4\) が臨界点です。これを超えると「中心への落下」が起き、波動関数は \(\ln r\) について周期的になる。

空間が「対数目盛りで周期的」になる ── これを離散的スケール不変性と言います。
連続的なスケール不変性(どんな倍率でも同じ)が、ある特定の倍率の整数乗でだけ同じに破れた状態です。

07実際に観測されている ── エフィモフ状態

三体問題で、これが本当に起きます(エフィモフ 1970)。同種ボソン 3 個が共鳴的に相互作用すると、超半径 \(R\) について有効ポテンシャルが \(\propto-(s_0^2+1/4)/R^2\)、\(s_0=1.00624\) ── ちょうど臨界を超えた \(1/R^2\) です。

位相が \(\pi\) 進むたびに、次の準位 $$\text{大きさの比}=e^{\pi/s_0}=22.69,\qquad \text{エネルギーの比}=e^{2\pi/s_0}=515.0$$
\(n\)大きさ(第 0 準位を 1 として)エネルギー比
011
122.69\(1.94\times10^{-3}\)
2515.0\(3.77\times10^{-6}\)
3\(1.17\times10^{4}\)\(7.32\times10^{-9}\)

07節 ── 対数周期性が、実験室で見えた

22.7 倍 ごとに、同じ形の束縛状態が無限に並びます ── エフィモフの梯子。
2006 年、超低温セシウム原子で実際に観測されました。

位相の言葉に戻すと ── 大きさが 22.7 倍 になるごとに、位相 \(s_0\ln R\) が \(\pi\) 進む。
★ 第 1 節の「10 倍 ごとに \(\beta\ln10\) だけ回る」と、まったく同じ勘定です(\(s_0\ln10=133°\))。

08第 5 回とつながる ── 複素次元と繰り込み群

第 5 回で、結合定数は \(\ln\mu\) について走ると見ました ── \(d\alpha/d\ln\mu=\beta(\alpha)\)「\(\ln\)(スケール)についての微分」── まさに虚数階の舞台です。

次元が複素数になると $$O(\mu)\propto\mu^{-\Delta},\qquad \Delta=\Delta_R+i\Delta_I\quad\Longrightarrow\quad \mu^{-\Delta}=\mu^{-\Delta_R}\cdot e^{-i\Delta_I\ln\mu}$$

★ べき乗に、対数周期の振動が掛かる ── これが離散的スケール不変性

現象状況備考
エフィモフ状態○ 実測超低温原子(2006)。比 22.7
\(1/r^2\) の落下◎ 厳密\(\lambda>1/4\) を超えると必ず
臨界現象の対数補正△ 場合による離散的な格子では出ることがある
拡散律速凝集(DLA)△ 数値報告はあるが議論がある
地震・金融の対数周期× 論争中★ 主張されているが、統計的に確立していない

確実なのは上の二つだけです。下の三つは主張の段階 ── 対数周期性は「見つけたくなる」パターンなので、統計的な扱いに注意が要る領域です。

09複素階数の全体像 ── 二つの独立なつまみ

一般の複素階数 $$(i\omega)^{\alpha+i\beta}=\underbrace{\omega^\alpha e^{-\beta\pi/2}}_{\text{振幅}}\cdot\exp\Bigl(i\bigl[\underbrace{\tfrac{\alpha\pi}{2}}_{\text{一定}}+\underbrace{\beta\ln\omega}_{\text{対数周期}}\bigr]\Bigr)$$
つまみ効く先出てきた回
実部 \(\alpha\)振幅の傾き\(\omega^\alpha\to6\alpha\) dB/oct第 1〜2 回
実部 \(\alpha\)一定の位相\(\alpha\pi/2\)第 10 回(時間の矢)
虚部 \(\beta\)振幅の定数倍\(e^{-\beta\pi/2}\)全体の大きさだけ
虚部 \(\beta\)対数周期の位相\(\beta\ln\omega\)★ 本回(スケール不変性)

09節 ── 階数の平面

実部 = 時間の矢の向きと強さ / 虚部 = スケールの周期性

この二つは独立です。だから階数は直線ではなく平面になります。
そして ── ★ 物理が使っているのは、その平面のごく狭い領域だけ。

\(\alpha\in[-1/2,\,2]\)(第 2 回の下限と上限)、\(\beta\) はほぼ 0。
\(\beta\neq0\) が出るのは、臨界的な \(1/r^2\) が現れる特殊な場面だけです。

【本稿の仮説】なぜ \(\beta\) はほとんど 0 なのか

第 2 回で「物理がほぼ整数階なのは、自然が局所的だから」と書きました。同じ論法を虚部に当てはめると ──
\(\beta\neq0\) は「特定の倍率が特別」ということを意味します。ところが自然法則は普通、特別な長さを持たないか、特別な長さを一つだけ持つかのどちらかです。
★ 前者なら連続的スケール不変(\(\beta=0\))、後者ならその長さで切れる(第 6 回の遮断周波数)。「倍率の梯子」が出るには、\(1/r^2\) のような特殊な釣り合いが要ります ── \(1/r^2\) は運動エネルギー \(\hbar^2/2mr^2\) とまったく同じ \(r\) 依存を持つ唯一のポテンシャルだから、長さが決まらず、代わりに倍率が決まる。
判定:既知の事実の言い換えであって、新しい主張ではありません。ただし「なぜ \(\beta\) が珍しいのか」の理由にはなっています。

練習問題

  1. 虚数階微分をかけても「音色が変わらない」のはなぜか。
    答えを見る
    音色は振幅スペクトルの形でほぼ決まりますが、\(|(i\omega)^{i\beta}|=e^{-\beta\pi/2}\) は \(\omega\) に依らないただの定数だからです。
    全周波数が同じ倍率で通るので、スペクトルの形は完全に保存される ── 変わるのは位相だけ。
    (厳密には位相も聞こえ方に効きます。強くかけると「ふわっ」とした前置き音がつく ── それがチャープです。)
  2. エフィモフ状態の比 22.7 と、第 1 節の「10 倍 で \(\beta\ln10\) 回る」を結びつけよ。
    答えを見る
    どちらも「対数に比例した位相」です。
    第 1 節:\(\varphi=\beta\ln\omega\)。エフィモフ:\(\varphi=s_0\ln R\)。
    次の束縛状態は位相が \(\pi\) 進んだところなので \(s_0\ln(R'/R)=\pi\)、つまり \(R'/R=e^{\pi/1.00624}=22.69\)。
    対数周期の「周期」は、比で表されます ── 足し算ではなく掛け算の世界。
  3. 「虚数階微分の裾は \(e^{-\beta\pi}\) で潰れる」ことの、実験上の意味は。
    答えを見る
    対数周期の振動を速くしようとすると、振幅が指数的に小さくなるということです。\(\beta=3\) で \(10^{-6}\)、\(\beta=5\) で \(10^{-10}\)。
    だから現実に観測できる対数周期現象は、比が大きい(= \(\beta\) が小さい)ものに限られます ── エフィモフの 22.7 倍 がまさにそれ(\(s_0\approx1\))。
    ★ 逆に言えば「比が 1.1 倍 の対数周期を見つけた」という主張には、強い証拠が要ります。

まとめ 階数を平面に広げる

\((i\omega)^{i\beta}=e^{-\beta\pi/2}e^{i\beta\ln\omega}\) ── 振幅は \(\omega\) に依らない定数、位相は \(\ln\omega\) に比例。虚数階微分は全域通過フィルタでした(白色雑音で 12 桁 確認)。

群遅延は \(-\beta/\omega\)(トーンバーストで確認、200〜1600 Hz で理論と 0.01 µs まで一致)。クリックは双曲線チャープになります ── 音色を変えずに時間だけ伸ばす操作。

インパルス応答は閉じた形で書けて、\(t\,h(t)=A(\beta)\sin(\beta\ln t-\arg\Gamma(1+i\beta))\) ── 対数目盛りの上の正弦波。裾の振幅は \(A(\beta)=e^{-\beta\pi}|\Gamma(1+i\beta)|/\pi\) で、\(\beta=3\) でもう \(10^{-6}\)。だから対数周期性は「見つけにくい」。

★ 実数階は時間並進(フーリエ)の道具、虚数階はスケール変換(メリン)の道具。

物理で虚部が立つのは、引力 \(1/r^2\) が臨界 \(\lambda=1/4\) を超えたときだけ。そのとき波動関数は \(\ln r\) について周期的になり ── エフィモフ状態として、22.7 倍 の梯子が実測されています(\(s_0=1.00624\))。

そして第 5 回の繰り込み群は \(\ln\mu\) についての流れでした。複素次元 = 離散的スケール不変性。
階数は直線ではなく平面で、物理はそのごく狭い一角にだけ住んでいます。

この文書は「考える波」シリーズ第 13 回です。計算は kenshou/kyosu.js で行っています。本回の数値について:\((i\omega)^{i\beta}\) の実信号への適用は、正の周波数で定義して負側を共役拡張する流儀(ヒルベルト変換と同じ)によります ── この流儀を取らないと出力が複素数になり、「音」になりません。群遅延の測定でトーンバーストの重心を使っているため、低周波ほど窓の有限長の影響を受けます(200 Hz での 7.6 µs のずれはそれです)。エフィモフの \(s_0=1.00624\) は同種ボソン 3 体・ゼロレンジ極限での既知の値で、本稿が求めたものではありません。実測される比は理想値 22.7 からずれることがあり(有限レンジ補正、三体パラメータ)、実験値には幅があります。離散的スケール不変性を地震や金融に当てはめる主張は本稿の立場ではありません ── 表に「論争中」と記した通りです。\(\Gamma(1+i\beta)\) はランチョス近似で計算し、厳密式 \(|\Gamma(1+i\beta)|=\sqrt{\pi\beta/\sinh\pi\beta}\) と 8 桁 一致を確認しています。 ── 印刷する場合はブラウザの「印刷」から「PDF に保存」を。

印刷 / PDF 化:⌘+P(Windows は Ctrl+P)。「答えを見る」で解答が開きます。