宇宙は計算機第 4 回 / 手を動かす(トイモデル)

描写はもう十分。今回は実際に回して、次元が「出てくる」のを見る

つなぎ方から、次元を測る 中心から \(r\) 歩で届く点の数 \(N(r)\) を実際に数える。\(N(r)\sim r^{D}\) の傾き \(D\) が測った次元
次元は宣言するものでなく、つなぎ方(規則)から測って出てくる出力だった ── それをブラウザ上で確かめる。

道具:第1回の \(D=d\ln N/d\ln r\)、第2回の「幾何は創発」 実測:中心からの BFS で \(N(r)\) を数える

第1〜3回は言葉の話でした。今回は手を動かします。単純な「つなぎ方の規則」を選ぶと、コンピュータが中心から幅優先で歩数を数え、空間の次元がその場で測られて出てくる。次元を先に決めて置くのではなく、連結の仕方から測定値として現れる ── 第2回で「幾何は出力」と言ったことを、実物で見ます。

01空間を「作る」のでなく「測る」

次元の測り方は第1回の式そのまま。中心の点から\(r\) 歩以内で届く点の数を \(N(r)\) とすると、\(d\) 次元的なつなぎなら体積のように \(N(r)\sim r^{d}\) で増える。だから:

測る次元 ── 第1回の式を、グラフの上で $$N(r)\sim r^{D}\quad\Longrightarrow\quad \boxed{\,D=\frac{d\ln N}{d\ln r}\,}$$

両対数に \(N(r)\) を打つと、直線の傾きが測った次元 \(D\)。第1回の \(F=1/(Cn)^D\) を「量が増える側」で読んだだけ。下の図は、この \(N(r)\) を実際に幅優先探索(BFS)で数えています ── 数値はズルなしの実測。

図:つなぎ方の規則を選ぶ(鎖/格子2D/格子3D/格子4D/木)。コンピュータが中心から BFS で \(N(r)\) を数え、両対数に打って傾き=測った次元 \(D\) を出す。灰の破線は次元 1・2・3・4 の参照傾き
スライダーで規則を選ぶと、その場で N(r) を数え直して次元を測ります。
実測した N(r) 最小二乗フィット(傾き=D)

02何が起きたか ── 次元は宣言でなく測定で出た

規則を切り替えると、測った \(D\) が変わります:鎖なら \(\approx1\)、格子2D なら \(\approx2\)、3D なら \(\approx3\)、4D なら \(4\) に迫る(有限格子ゆえ実測はやや低めに出て、格子を大きくするほど \(4\) へ収束 ── これ自体が離散→連続の縮み)。どこにも「次元は4」とは書いていない ── つなぎ方だけを与え、\(N(r)\) を数えたら、次元が測定値として出てきた。

木(ツリー)だけ、次元が出ない

木を選ぶと \(N(r)\) が指数的に増え、\(r^D\) というべき則に乗らない(両対数で上に反っていく)。=有限次元を持たない("無限次元的")。どんな規則でも良い次元が出るわけではない ── これも大事な実測です。

03正直に言うと、これは半分ズル

気持ちよく4が出ましたが、つなぎ方(格子)を手で入れています。格子4D は「次元4」を最初から配線に埋め込んでいて、それを測り返しただけ。本物の創発は、その配線自体を、点の情報を持たない局所的な書き換え規則から"生やす"必要があります。ここが第2回の③(更新規則=穴)と直結する所です。

本物のレシピ(第2回の再掲+この回での具体化) ① 状態をグラフで持つ(配列でなく)/② 可逆な局所書き換えで更新/③ 因果順序(半順序)を課す/④ そしてこの回の \(D=d\ln N/d\ln r\) で創発次元を測り、\(\to4\) に流れるか検算する。実際に Wolfram モデル・因果集合・CDT はこれをやっていて、CDT では 4次元の膨張宇宙が数値的に生えてくる ── ただし因果条件は手で入れ、連続極限は今も最前線。「配線を生やす規則」を当てるのが、埋まっていない穴。
正直な線

このトイが示せること:(1) 次元は連結の測定量で、宣言でなく出力。(2) 幾何の創発は原理的に可能。(3) 4次元的につながっていれば、測ると4が出る。(4) 木のように次元が定まらない規則も普通にある。

このトイが示せないこと:宇宙が4次元であること(つなぎ方を手で入れたから)。局所書き換え規則から4次元+ローレンツ不変性を導くこと(=第2回③の穴、埋まっていない)。図の \(N(r)\) は有限サイズの格子の実測なので、\(r\) が大きい端では境界で頭打ちになります(そこはフィットから外しています)。この文書に「解けた」はありません。

練習問題(この一枚+図で解けます)
  1. このデモで、次元は「宣言」されたか「測定」されたか。どうやって出たか。
    答えを見る
    測定。中心から BFS で「r 歩以内に届く点の数」N(r) を実際に数え、両対数プロットの傾き D=d ln N/d ln r として出した。次元を先に置いてはいない。
  2. 木(ツリー)で「次元」が出ないのはなぜか。
    答えを見る
    N(r) が指数的に増え(毎歩ほぼ倍)、べき則 r^D に乗らないから。両対数で直線にならず上に反る=有限次元を持たない(無限次元的)。小世界的なつなぎも同様。
  3. このトイが示せること/示せないことを、それぞれ一つ挙げよ。
    答えを見る
    示せる:次元は連結から測る出力量で、創発は可能(4Dのつなぎなら4が出る)。示せない:宇宙が4次元であること(つなぎを手で入れたから)と、局所規則からの4次元+ローレンツの導出(=穴)。

第4回まとめ次元は、つなぎ方から測って出た

手を動かした。つなぎ方の規則を選び、中心から BFS で \(N(r)\) を数え、両対数の傾きとして次元を測定した ── 鎖1・格子2D→2・3D→3・4D→4、木は発散(次元なし)。次元は宣言でなく連結の測定量=出力だと、実物で確かめた。第2回「幾何は創発」の、手触りのある証拠。

ただし格子は次元を配線に埋め込んだ半分ズル。本物は配線自体を局所書き換え規則から生やし、\(D\to4\) を検算する(Wolfram/因果集合/CDT が実際にやっている)。その規則を当てる=第2回③の穴で、そこは埋めない ── 掟どおり、旗は立てない。

この文書は「宇宙は計算機」シリーズ第4回です。図はブラウザ上で d 次元格子グラフ(鎖・2D・3D・4D)および二分木を実際に生成し、中心から幅優先探索(BFS)で「距離 r 以内の頂点数 N(r)」を数え、両対数プロットの傾きを最小二乗で測って創発次元 D を出しています(数値はすべてその場の実測、境界飽和域はフィットから除外)。格子ボール体積 \(N(r)\sim r^{d}\) と二分木の指数成長 \(N(r)\sim2^{r}\)、成長次元・スペクトル次元による次元の測定、Wolfram モデル・因果集合・CDT による離散幾何からの次元創発(CDT の 4次元 de Sitter 的宇宙の数値的創発を含む)は、確立した数学/活発な研究プログラムです。局所書き換え規則からの 4次元+ローレンツ不変性の導出は現行の未解決問題で、本デモの格子は次元を配線に組み込んだ模式(=創発の機構の例示であって、宇宙の次元の導出ではありません)。 ── 印刷する場合はブラウザの「印刷」から「PDF に保存」を(印刷版ではスライダーと解答は静止・非表示になります)。

印刷 / PDF 化:Ctrl+P(Mac は ⌘+P)。画面ではスライダーで規則を選ぶと、その場で N(r) を数え直し、両対数の傾き=測った次元が出ます。「答えを見る」で解答が開きます。