わかる力番外編・波と力 ②(三部作その2)

波①:力から波が生まれる → 波②:力そのものが、波だった

力そのものが、波だった 電気の場は、静かなときは物を引く/押す“力”。同じ場を揺らすと、遠くへ飛ぶ“波(光)”になる。
力と光は、別物ではなく、一つの電磁場の、二つの顔だった。

必要な道具:第2・6回の場、波①、c の気持ち 力(近接場) と 光(放射) は同じ場

波①では「力から波が生まれる」(復元力+慣性の連鎖)を見ました。今回は、もう一歩踏み込んで「力そのものが波だった」という話。第6回で、力は場を介して伝わると見ました。その場 ── 電磁場 ── は、静かなときは電荷どうしを引く/押す“力”として現れます。ところが同じ場を揺らすと、さざ波が立って遠くへ飛んでいく。それがです。力を担う場と、光の正体が、同じ一つのものだった。マクスウェルが電気・磁気・光を一つに束ねた、あの発見の中身を、力の側から見ます。

01静かなときは「力」── 近くを引く場

電荷は、まわりの空間に電磁場を作ります(第2・6回)。静かに置いてあるとき、この場は放射状にのびて、近くの別の電荷を引いたり押したりする力として働く。これが日常の電気の力であり、原子を束ねる力(第2回)。場が「力」の顔をしている状態です。

02揺らすと「波」── 遠くへ飛ぶ光

ここで電荷を揺さぶってみます。すると場の“のび”が揺れ、その揺れが波紋のように外へ伝わっていく。伝わっていく揺れ ── それが電磁波、すなわち光です。マクスウェルは、電気と磁気の法則を突き詰めると、この波の速さが \(c=1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}\) になると導き、それが光速と一致することから「光は電磁波だ」と見抜きました。波①の \(v=\sqrt{\text{復元力}/\text{慣性}}\) と、まったく同じ骨格(真空の電気的・磁気的な“かたさ”の比)です。

今回の核心 ── 一つの場、二つの顔

静かな電磁場 → (近くを引く/押す・近接場)。
揺らした電磁場 → 波(光)(遠くへ飛ぶ放射)。
両者は別物ではなく、同じ一つの電磁場の、静と動の顔。力そのものが、揺らせば波になる。

下の図で、電荷の揺らし方を変えてみてください。揺らさなければ、場はまっすぐのびた“力”のまま。揺らすほど、場に波(光)が乗って遠くへ飛んでいきます。同じ一本の場が、力にも波にもなる。

図:電荷から右へのびる場。揺らさない=まっすぐ(力・近接場)。揺らすと波(光)が乗って遠くへ飛ぶ。同じ一つの場の二つの顔

03第6回の担い手と、握手する

第6回で「力は担い手(光子)のやりとり」と見ました。その光子の正体が、今つながります ── 光子は、この電磁場の波の“粒”。つまり、力を伝える担い手(光子)と、光(電磁波)は、同じもの。力を伝えるものと、光は、区別がない。「力そのものが波だった」というのは、力を運ぶ場が、そのまま波として飛べる、という意味でした。第6回(やりとり)と波①(力→波)が、ここで一点に合流します。

つなぐ声 ── 重力にも“波”がある 同じことは重力にも起きます。第5回で重力は時空の幾何だと見ました。その時空を揺らすと ── 重力波(時空のさざ波)が光速で飛ぶ。2015年に初検出され、2017年には光と同時に届いて「重力の速さ=光速」も確かめられました(番外編「力の速さ①」で扱います)。どの力も、静かなときは“力”、揺らせば“波”。力と波は、あらゆる力に共通の、静と動の関係だったのです。
◇ ◇ ◇

04剥がして見えたもの ── 力と波は、一つの場の静と動

波②の結論。力と波は、別々の現象ではなく、一つの場の“静”と“動”の顔でした。静かな場は近くに力を及ぼし、揺れた場は波となって遠くへ飛ぶ。電磁気なら、力(電気の引き合い)と光(電磁波)が同じ電磁場。だから「力そのものが波だった」。本編の背骨「力は場を介した関係」に、「その場は揺らせば波になる」という一枚が重なりました。

正直な線

静的な力(近接場)と、飛んでいく波(放射場)は、厳密には場の別の成分で、放射は電荷を加速したときだけ出ます(等速では出ない ── 番外編「力の速さ③」の話)。「力と波は同じ場の二つの顔」は正しい一方、「静かな力がそのまま波になる」わけではなく、揺らす(加速する)と波が生じるのが正確です。

静的なクーロン力を「仮想光子の交換」と書くのは計算上の記述で、実在の光(実光子)と同一ではありません(第6回の正直な線)。図は場のふるまいを1本の線で単純化した模式で、電場・磁場が直交して伝わる実際の電磁波を厳密に描いたものではありません。

練習問題
  1. 電気の「力」と「光」が同じ場の二つの顔だ、とはどういう意味か。
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    同じ電磁場が、静かなときは近くを引く/押す力(近接場)として、揺らすと遠くへ飛ぶ波(光=電磁波)として現れる、という意味。力と光は別物ではなく静と動の顔。
  2. マクスウェルは、光が電磁波だとどうやって見抜いたか。
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    電磁気の法則から電磁波の速さ \(c=1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}\) を導き、それが測定済みの光速と一致したから。波①の v=√(復元力/慣性) と同型。
  3. 第6回の担い手(光子)と光の関係は。
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    光子は電磁場の波の粒。力を伝える担い手(光子)と光(電磁波)は同じもの。だから「力を伝えるもの」と「光」に区別がない。

まとめ一つの場が、力にも波にもなる

電荷のまわりの電磁場は、静かなときは近くを引く/押す“力”(近接場)。同じ場を揺らす(電荷を加速する)と、さざ波が立って遠くへ飛ぶ“波(光)”になる。マクスウェルは電磁波の速さが光速に一致することから「光は電磁波」と見抜いた ── 波①の v=√(復元力/慣性) と同じ骨格。力と光は、一つの電磁場の静と動の顔だった。

第6回の担い手(光子)は、この場の波の粒。だから力を伝えるものと光は同じ ── 「力そのものが波だった」。重力も同様で、時空を揺らせば重力波が飛ぶ。どの力も、静なら力・動なら波。次回(波③)は、その波が逆に力を及ぼす側(輻射圧)と、量子で「粒子が波・力が位相」という、いちばん深い「波に見える力」へ。

この文書は「わかる力」シリーズ番外編「波と力」②、物理好きの高校生・大学生向け読み物です。静電・静磁場(力)と電磁波(光)が単一の電磁場の異なる側面であること、加速する電荷が電磁波を放射すること、マクスウェル理論が電磁波速度 \(c=1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}\) を与え光の電磁波説を確立したこと、光子が電磁場の量子であることは、確立した内容です。放射(遠方場)は電荷の加速で生じ、静的近接場とは区別されます。静的クーロン相互作用の仮想光子記述は摂動論的であり実光子とは異なります。重力波は2015年に初検出(LIGO)、2017年に電磁波との同時観測(GW170817)で伝播速度が光速と一致することが確認されました。図は場を1次元で単純化した概念モデルです。 ── 印刷する場合はブラウザの「印刷」から「PDF に保存」を(印刷版ではスライダーと解答は静止・非表示になります)。

印刷 / PDF 化:⌘+P(Windows は Ctrl+P)。画面ではスライダーで、揺らすと場が波(光)になって飛ぶ様子が見えます。「答えを見る」で解答が開きます。